第112話 依頼
「お久しぶりです!! 今日はよろしくお願いします!!」
「あ、いえ。こちらこそ。あの、俺の方が歳下なんで敬語はやめてもらえると…」
対戦相手決まんねーよーと思いながら、三銃士のスパーリングパートナーを務める。自分の練習も欠かさずやってて、そろそろどうするか決めないとなって思ってると、とあるジムからスパーリングパートナーをしてくれないかって依頼がきた。
「歳なんて関係ありません!! 自分は尊敬してる人にはなるべく敬語で話すようにしてますので!!」
「そ、そうですか…」
「しかしまさか受けてもらえるとは思ってませんでした! ダメ元だったんですが!」
「比較的暇だったってものありますけどね」
スパーリングを依頼してきたのは、見た目ヤンキーみたいな人。俺の専属教師であるチンピラ龍騎君と見た目はいい勝負してる。
皆さん覚えてるだろうか。
俺のプロ初戦の相手の小園選手である。
相変わらず声がデカくて気圧されるぜ。
この人も龍騎と一緒で見た目とは裏腹に滅茶苦茶良い人なんだよね。やっぱり人は見た目で判断しちゃいけないってのが良くわかる。
久々にお会いしたけど、見た目のチンピラ具合に更に磨きがかかってる。剃り込みとか入っちゃってるし、ちょっとその筋の舎弟頭とかにしか見えない。
これで背中に紋紋が入ってたら確定ですよ。幸い小園選手にはないけどさ。
で、小園選手。
うちの三銃士と日付は違うけど、近々ライト級日本タイトルに挑戦するみたいなんだよね。
俺がチャンピオンになってすぐに返上した玉座は、現在夜木屋選手が座っている。マイク選手と戦って判定勝ちだったらしい。ハイライトしか見てないけど、相変わらずディフェンスが上手いなぁって思いました。
ほぼ初見でフリッカーに対応してきたのは、夜木屋選手とケヴィン選手だけだからね。
小園選手は俺に負けてから、コツコツと実績を積んでたみたいで、あれから一応負けなしらしい。依頼が来てから軽く映像を見たけど、かなりレベルアップしたなって印象だ。ちょっと上から目線で申し訳ないけど。
この人基礎がきっちりしてるんだよなぁ。タイプで言ったらケヴィン選手が一番近いと思う。
「あれから皇さんの試合は全部追ってます! まさか一気に2階級チャンピオンまで登り詰めるとは驚きでした!!」
「あははは。ありがとうございます」
「自分の目標も世界チャンピオンです! 今日は色々学びたいと思ってるのでよろしくお願いします!」
そう言って小園選手は更衣室に着替えに行った。
ここまでよいしょしてくれると気持ち良くなっちゃうね。クラスメイトとか、地元のおっちゃんおばちゃんに褒められたり、祝われるのも嬉しいけど、やっぱり同じボクサーにああいう風に言ってもらえるのは嬉しい。
「凄い声が大きい人ですね」
「初対面の時もそうだった。あれが素なのかな。一緒にいる人はちょっとしんどそうだよね」
孤南君が小園選手が居なくなったタイミングで、こっちにやって来る。
声の大きさにびっくりしたみたいだ。
良い人なんだけどね。ずっとあのテンションと声はちょっとキツいかなって。見た目の怖さも相まって、恫喝してる風に見られても仕方ないと思うんだ。
「さっ。俺も準備しよう。来て良かったと思ってもらえるように頑張らないとね」
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