第107話 初めての体験


 「おおぉ…」


 試合翌日。いつも通りインタビューやらなんやらをこなしてるんだけど、体がダルい。


 いつもは次の日になってもケロッとしてられるんだけど、なんか今回は非常に体がダルい。


 「最後のゾーンに入った時に思った以上に消耗してたって事かな」


 多分そういう事だと思う。あそこで決められてなかったらヤバかったんじゃないかな。

 試合が終わった後はアドレナリンとかで、テンションMAXだったけど、一夜明けるとこんなにしんどいとは。


 「普通は試合終わりはそうなるもんだ。むしろ今まで平気そうにしてた拳聖がおかしいんだよ」


 「あれ、なんかケヴィン選手のトレーナーに呼ばれてなかった? もう戻って来たんだ」


 インタビューをこなしてると、父さんが帰って来た。なんか向こうのトレーナーさんに呼ばれてたんだよね。俺じゃなくて父さんを呼ぶ意味があんまり分からなかったけど。


 トレーナーの同士技術交換の話かな? あ、そういえば試合前に、父さんはケヴィン選手に睨まれてたなぁ。やっぱりなんか因縁でもあったんじゃなかろうか。


 「ああ。明後日に少しだけ時間を取ってくれないかって言われてな。拳聖も当分は練習休みで手が空いてるしOKしといたよ」


 「……やっぱり何か向こうの陣営にやらかした事あるんじゃないの? 殺されないようにね」


 「そんな物騒な感じじゃなかったから大丈夫な筈だ」


 分からないぞ。油断させておいてグサリって可能性があるからね。俺がボディガードとしてついていこうか? いや、武器を持ってる相手とはとてもじゃないけど、戦えないや。頑張って来て下さい。なむなむ。


 「それで体がダルいってのはどんな感じだ?」


 「フルマラソンを二回連続全力疾走したような感じ。とにかくダルい。疲れてるだけだと思うけど」


 「病院で脳とかに何も異常は無かったんだな?」


 「うん」


 1試合でここまで疲労するのは初めての経験だ。ゾーンは結構疲れるんだなぁ。まだまだ鍛え方が足りませんよ。もっともっと肉体改造しなければ。



 更に翌日。

 まだ体はダルいけど、熱とかがある訳でもないし、とりあえず学校に向かう。テストも近いしね。チャンピオンを倒しても、俺には敵がいるのです。


 「わはー!」


 学校には前回と同じように垂れ幕が。

 皇拳聖2階級制覇おめでとうですって。

 携帯でパシャパシャ写真を撮って、そのままSNSにアップする。


 「んふー! こうしてみると実感が湧いてくるな」


 試合が終わってすぐでも実感が湧かないんだよな。ちょっと時間が経ってからジワジワくると言いますか。


 「拳聖! おめでとう!」


 「凄かったな!」


 「生であんな試合見れるなんて最高だったぜ!」


 教室に入るとそれはもうヒーローである。

 これがチャンピオンになって一番嬉しい瞬間かもしれない。みんなから祝われるってこんなに嬉しい事なんだなぁ。


 少し気になるのは黄色い声援がないって事ですね、ええ。いや、女性陣にもおめでとうって言ってもらえてるんだけどね?


 漫画では『きゃー! 皇くーん!』みたいなのがあるじゃん? そういうのがない。

 贅沢言うな、生意気言うなって言われればそれまでなんだけどね。


 皇拳聖君も18歳のお年頃な訳ですよ。

 そろそろ彼女が欲しいなーなんて思っちゃったり。


 俺がマザコン気味なのがダメなんだろうなぁ。

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