第106話 2階級制覇
「ふぅ」
勝った。
目の前で倒れてるケヴィン選手を見てそう思った。
ケヴィン選手の目が塞がってるって分かってから猛ラッシュを仕掛けた。
途中からなんかハイになってきて、自分でも訳が分からなくなるぐらい体が動いた。
相手の動きが手に取るように分かって、今思えばゾーンに入ってたんだろうなって理解した。
猛ラッシュの途中でパンチの速度を緩めて、わざと隙を作った。ケヴィン選手なら絶対にその隙を逃さずに動いてくると思ってた。
実際その通りになって、ワンツーに合わせてカウンター二閃。ワンのジャブに左フックを合わせて、ケヴィン選手の膝を折る。
そこで勝負あったかなと思ったんだけど、そのままケヴィン選手はツーのストレートを打ってきたから、躱して右アッパーでかち上げた。
若干ケヴィン選手の体を浮かせたのがパンチの感触で分かった。あれで立ち上がってくるバケモノは恐らくいないだろうって思える程会心のカウンター。
アッパーでかち上げた右腕をそのままにガッツポーズ。
レフリーが慌てて割って入って来て、両手を大きく振った。
『き、決まったー! 皇選手のカウンターだー!! 猛ラッシュからのカウンター!! チャンピオンがマットに沈んだ!! 勝った! 勝ったぞ! 皇選手!
高校生で2階級制覇を成し遂げました!!』
終わったと思ったら一気に疲れがきた。最後のラッシュは結構きつかったからなぁ。無呼吸でパンチを打ち続けるのは、本当にしんどいんだ。練習でも毎回吐きそうになるし、試合なら尚更。
「拳聖!!」
「うぇーい!!」
でもそれはそれ。
勝ったんだからへばってる姿は見せられない。父さんがリングに上がってきたので拳をぶつけてハイタッチ。そのまま抱き合ってお祭り騒ぎだ。
『18歳で2階級制覇! 皇選手は偉業を成し遂げました! 父・皇拳士の3階級制覇にも負けない立派な記録! 本当に! 本当に凄いぞ皇拳聖!!』
観客も湧きにまくってるのが分かる。
ラッシュ中も拳聖コールが聞こえてかなり力になりました。
俺はリングの四方にお礼して歓声に応える。
『今! チャンピオンベルトが新チャンピオンの皇拳聖の腰に巻かれました! 無敗の世界タイトル戦は皇拳聖に軍配が上がりました! まだ18歳! 一体彼はどこまで登り詰めるのでしょうか!! 今から楽しみが止まりません!!』
リングでわちゃわちゃしてると、チャンピオンベルトがいつの間にか腰に巻かれていた。
「これで二つ目か。まだまだ先は長いな」
「お前は若いんだ。焦らずじっくり、ゆっくり成長していけばいい。お前なら必ず夢を叶えられるさ」
巻かれたベルトを見てボソッと呟くと、父さんは聞こえてたみたいで、激励の言葉をかけてくれた。
そうだよね。まだ18歳だもんね。
これから怪我さえなけりゃ10年以上は全盛期で戦える。まだまだ俺のボクシング人生は始まったばかりなんだ。
これからも9階級制覇を目指して頑張ろう。
特典なんてチートを貰った俺に出来ない訳がない。練習を続けてれば必ず制覇出来るはず。
俺の戦いはこれからだ。つって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます