第104話 VSスーパーライト級ケヴィン6


 「むう」


 ここからは俺の時間だわっしょいと思ってたけど、そう簡単に事は運ばなかった。


 ケヴィン選手のガードがとにかく固すぎる。もう6Rだってのに、全然緩まないんだよ。


 やっぱりあの2Rのカウンターで仕留めておくべきだったなぁ。時間を見てなかった俺が悪いんだけど。警戒してるのか、迂闊に突っ込んでこなくなったし。


 「うおっ!」


 「フッ!」


 どうしたもんかと悩んでたら、急にケヴィン選手がギアを上げてきた。

 一瞬でパンチを5.6発まとめて打ってきて、後手に回ってしまう。


 ジリジリとコーナーに追い詰めてたのに、後退させられてしまった。ケヴィン選手は力を緩めずにどんどんと押してくる。


 急なペースアップに何があったのかと思いながらも防御に回る。なんか今までのケヴィン選手と違って、パンチも雑なんだけどその分読めない。


 大振りってほどじゃないけど、パンチを振り回してくる感じ。俺は下がりつつ、そのパンチに合わせてカウンターを放つ。


 今までのケヴィン選手相手なら当たらないパンチだ。俺も牽制の意味を込めて打っただけだったんだけど。


 何故か綺麗に俺の右フックがケヴィン選手の側頭部を打ち抜いた。そして膝がカクンと折れてダウンした。


 『ダウーン!! 一瞬の攻防! チャンピオンのケヴィン選手が押し返したと思った瞬間、皇選手のカウンター一閃! スナイパーのお株を奪うような一撃だー!!』


 「ワン! ツー! スリー!」


 「え?」


 パンチを打った俺がびっくりである。

 頭に?マークを浮かべながら、とりあえずニュートラルコーナーに向かって、片膝をついてるケヴィン選手を見る。


 「フォー! ファイブ! シックス!」


 顔は俯いたままだけど、審判がカウントを止めないところを見ると、意識はあるんだろう。


 そしてカウントがシックスを越えたところで、ケヴィン選手はスッと立ち上がってファイティングポーズをとった。


 そしてそこでようやくどうしてケヴィン選手が攻勢を仕掛けてきたのか、簡単にカウンターをもらったのか理解した。


 『チャンピオン立ち上がりました! 意識ははっきりしてるようで…おーっと! チャンピオンの左眼の上辺りが大きく腫れています!』


 ケヴィン選手の眼の上が腫れていた。

 多分それのせいで俺のカウンターがちゃんと見えてなかったんだろう。


 ガードで隠れてたから全然気付かなかったぜ。


 「ファイト!」


 ケヴィン選手が継戦の意思を示したので、試合再開。俺は弱点に付け込まない聖者じゃありませんよ?


 徹底的に狙わせてもらう。


 『皇選手のフリッカージャブが唸りを上げて襲い掛かる! チャンピオン防戦一方! これは決着が近いか!? 観客のボルテージも上がっていきます!』


 拳聖コールが試合に集中してても聞こえる。それでテンションが上がり、俺もギアを上げて徹底的に左眼の死角からパンチを放っていく。


 ケヴィン選手も狙われてるのが分かってるのか、ガードを固めてフットワークでなんとか死角を作らないように立ち回ってるけど、そこを逃がすほど俺は甘くありませんよ。


 マジでここが勝負所だ。

 ペース配分を考えずにここはギアを上げて追い詰めさせてもらうぞ。

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