第103話 VSスーパーライト級ケヴィン5


 「むーん。時間が足りなかったか」


 「最後のは誘ったのか? 惜しかったな」


 「倒せないなら見せない方が良かったかも」


 第2ラウンドが終わってセカンドへ。

 久々にスタンダードなスタイルで戦ったから、なんか新鮮な気持ちだ。


 でもなんか窮屈な感じがするんだよね。

 ガードを下げてる時の方が、なんだか自分って感じがする。


 思ったよりケヴィン選手に効果的だったから、まだ続けようかなと思ってるけど。

 俺対策でフリッカーの間合いやリズムに慣れすぎてたんだろうな。なんかケヴィン選手は滅茶苦茶戸惑ってるように見えた。


 ガチガチに対策をしてくる相手にはスタンダードな戦い方をするのも良いなと勉強になりました。


 でも最後は失敗した。

 あのカウンターは見せない方が良かった。

 次からは迂闊に突っ込んで来ないだろう。


 「後半は押してたが、まだまだ五分だぞ。油断せずに着実に詰めていけ」


 「いえっさー」


 父さんの言う通りだな。

 ケヴィン選手は今までで一番やりにくい選手かもしれない。ここまで俺のパンチのリズムとかまで読んでくるとは思ってなかったからね。


 次のラウンドからもしっかりペースを握って、試合を有利に進めていこう。





 そんなこんなで第5Rが終了した。

 やっぱり俺が懸念した通り、ケヴィン選手はカウンターを警戒してか、無理に突っ込んで来なくなった。


 しかもラウンドを重ねる毎に俺のスタンダードスタイルにも慣れてきたのか、5R目の最後の方はボディに二発ほど良いパンチをもらってしまった。


 ポイントは多分俺が取ってるだろうが、全然油断は出来ない。次のラウンドからはいつものスタイルに戻すべきだな。


 スタンダードスタイルも続けられない訳じゃないけど、向こうも慣れてきたし俺もそろそろボロが出る可能性がある。練習はしてるけど、いつものスタイルの方がやりやすいのは間違いないし。


 『さあ折り返しの第6Rが始まりました! 試合は皇選手が僅かにリードといったところ! まだまだどうなるか分かりません! おおっと! 皇選手がいつものスタイルに戻りました! 観客からは大きな拍手が上がります!』


 始まってすぐにガードを下げたスタイルで、挑むと何故か滅茶苦茶拍手が聞こえた。

 もしかして、俺のスタンダードなスタイルは面白くなかったのかしらん?


 俺はそんな色モノ枠のボクサーじゃないんだけど。


 「フッ!」


 ケヴィン選手は俺がスタイルを元に戻した事で、一瞬動きを止めたものの、さっきと同じようにジャブで牽制してくる。


 俺はそのジャブをグローブで思いっ切り弾く。そして体勢を崩したところにボディのダブルをズドン。


 「グッ」


 これで5Rの最後の方に貰ったパンチの借りは返しましたな。普通に痛かったからやり返したかったのです。


 ケヴィン選手は慣れたからそろそろ俺の時間だと思ってるのかもしれない。でも、慣れてきたのは俺も一緒。ようやくパンチのリズムとかが読めるようになってきたんだ。


 最近練習してたジャブを弾くのも上手く決まったし、そう簡単にケヴィン選手のリズムにはしませんよ。


 むしろここからは俺の時間だ。

 攻めて攻めて攻めまくってやる。


 

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