第101話 VSスーパーライト級ケヴィン3


 ☆★☆★☆★



 「きつい」


 「そうか? 悪くない滑り出しだと思ったが」


 なんとか第1Rは無事に切り抜けた。

 ケンセーが仕掛けてくるのは一応頭に入れていたが、圧力は思った以上だった。


 「ガード越しでも芯にくるようなパンチを打ちやがる。グローブの中にメリケンでも握り込んでるんじゃねぇか?」


 「それほどか」


 まあ、それは流石に冗談だが、それぐらいパンチがズシンときやがる。

 今の所はなんとかガードで防げてるが、ラウンドが進むとどうなるか分かんねぇな。


 「多分次のラウンドからは落ち着いたペースで攻めてくるだろう。相手もお前のガードが固いのは分かったはずだからな。どこかしらに糸口を見つけてこようとするはずだ」


 「俺も攻め手を探さねぇとな。ケンセーの目はやっぱり良い。入ったと思ったカウンターを何度も避けられてる。余程噛み合わねぇとクリーンヒットは狙えねぇぞ」


 「そうだな。そう何回もチャンスはないだろう。一回のクリーンヒットで仕留める気でいかないとな。ケンセーの耐久力がどれだけのもんか分かってれば良かったんだがな。クリーンヒットを貰った事例がほとんどない」


 「ケンセーがいくら強くても人間だ。脳を揺らせば倒せる。顎を的確に打ち抜いてやる」


 耐えるのは得意だ。

 チャンスが来るまでは耐えてやる。

 そしてチャンスが来れば一撃で仕留める。

 今までと一緒だな。



 ☆★☆★☆★



 第2Rが始まった。

 前のラウンドとは違ってゆったりとしたスタート。俺は腕をダラリと下げながら、ジリジリとケヴィン選手に詰め寄る。


 相手も俺を観察してるのか、最初の10秒くらいはお互い手を出さずに睨み合いが続いた。


 「シッ!」


 とりあえずジャブ。

 俺の方がリーチが長いんだし、このジャブの差し合いで負ける訳にはいかない。


 が、ケヴィン選手はしっかり見切ってるように見える。俺の射程距離をしっかり把握してる印象だ。


 今までは大体の相手にはまずフリッカーで面を食らわせて有利に進める事が出来てたんだが。


 それならばと俺はスイッチしてサウスポースタイルからの右ジャブをフリッカーで放つ。


 しかしそれもしっかり対策済みだと言わんばかりに対応してくる。

 どれだけ対策してても、最初は初見殺し出来ると思ってたんだけどな。


 「フッ!」


 ケヴィン選手は俺のジャブの打ち終わりについてくるように接近してきて、小気味良くジャブを打ってから離れていく。

 

 俺も入ってきたタイミングでパンチを打ってるが、相変わらずガードはカッチカチ。


 なんて言うか、俺のパンチの呼吸が読まれてる印象がある。俺のジャブの打ち終わりのタイミングで入ってくるのとか完璧だし。


 これはケヴィン選手は相当研究してきてるな。一応、一定のリズムにならないように常に工夫はしてるんだが、それでもどうしても癖ってのがある。


 それを正確に読まれてる感じだ。


 うーん。これはあれだな。

 少し混ぜ返した方がいいかもしれん。

 このままだとケヴィン選手の想定通りの動きしか出来ない気がする。


 って事で、俺はいつものノーガードではなく、しっかりガードを上げてオーソドックスなボクサースタイルへと構え直した。

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