第99話 VSスーパーライト級ケヴィン1
レフリーに呼ばれてリング中央でケヴィン選手と対面する。俺の方が身長はデカいけど、なんか体の大きさってのは、ケヴィン選手の方が大きい気がするな。
身長が俺より低いけど、その分筋肉をつける事が出来るからその差かな。
レフリーのいつもの注意事項を聞き流しながら、ケヴィン選手と目を合わせる。
向こうもこちらを真剣な目でジッと見ていて逸らさない。
俺はニコニコしてるんだけど、ケヴィン選手は真顔だ。リュカ選手みたいにニコニコ返しをされたら腹立つけど、無反応ってのも面白くないもんなんだな。
そんな事を内心で思いながら、最後にケヴィン選手とちょこんとグローブを合わせてセコンドに戻る。
「序盤は様子見しようかと思ってたけど、ちょっと最初の1分ぐらいは仕掛けてみる」
「そうか。お前がそう思ったなら構わないが、変なパンチだけは貰うなよ」
「うん」
俺はマウスピースを父さんにはめてもらいながら、ちょっと予定を変更する事を伝える。
いつも通り相手の出方を窺おうと思ったけど、ケヴィン選手は冷静な人っぽい。こっちから軽く揺さぶらないと、試合が動かないんじゃないかなと。そう思った次第であります。
そして第1Rのゴングが鳴った。
俺とケヴィン選手はリング中央付近でお互いに腕を突き合わせてご挨拶をする。
これ、やったの何気に初めてだ。
そういえばこういうのをテレビとかで見た事があるね。
そんな事がありつつ仕切り直しだ。
俺はとりあえず揺さぶってみようかと、ジャブを打とうとしたんだけど。
「うおっ!」
それより先にケヴィン選手が仕掛けてきた。これまでの試合を見ても、この人は立ち上がりはゆっくりだから、ちょっとびっくりしちゃった。
ジャブストレートのワンツーを上半身の動きだけで避けつつ、パンチの打ち終わりについていくように少し体勢を低くして接近する。
そのままインファイトにと思った瞬間、目の前にアッパーが飛んできていた。俺は首を捻ってギリギリのところで回避。ケヴィン選手はそのまま距離を取った。
今のはちょっと危なかったな。
ギリギリまでアッパーが見えてなかった。
あのワンツーも俺をインファイトに誘う為の撒き餌だったのかね? 普通に引っ掛かったんだが。
うーん。内に入ろうとするとあのアッパーが飛んでくるのか。これはちょっと苦労するかもなぁ。目を離したつもりはないのに、ギリギリまで見えなかったのは驚異的だ。
体の動かし方で上手い事隠してたんだろうが、普通にしてやられた。映像でもこんなパンチ見た事なかったし。隠してたのか、新しく習得したのか。
どちらにせよ、凄いテクニックだ。
『凄い一瞬の攻防だ! 息をつく暇がありません! 躱した皇選手も凄いが、チャンピオンの静かな一撃! このパンチはこれからも警戒せざるを得ません! ここから皇選手はどう立ち回っていくのか!』
どうしよっかな。あのパンチを見せられたら、内に入るのに躊躇するのが当たり前だけど。
とりあえず避けれたし、もう一回突っ込んでみようかなとも思えるんだよねぇ。
果たして避けれたのが罠なのか。これで慣れさせておいて、次はもっと鋭いパンチで仕留めてくるかもしれない。
中々考えさせらるな。
あれが最高のパンチだったのか、それとも撒き餌なのか。
行けそうな気もしなくもないが、誘われてる気もする。うーん、こんなに考えさせられるのは初めてだなぁ。
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