第98話 試合直前
「うみゃい!」
計量と試合前インタビューが終わって、早速リカバリー。最初は軽いもので慣らしつつ、メインの母特製うどんをがっつく。
やっぱり減量後はこれを食べないとね。
「これも美味しいな」
で、最近の俺のブームは焼き牡蠣である。
これに醤油とかレモンをちょろっとかけて食べるのが最高に美味しいのだ。
なんか良い場所から取り寄せてる牡蠣らしく、かなり大ぶりでプリプリで最高なのである。
「是非生でも食べてみたいところだけど」
「食あたりの可能性があるから無しだ。そういうのは試合前じゃないときに試せ」
との事なので生食は残念ながら無し。
ちゃんと対策しても万が一があるからね。
きちんとリカバリーした翌日。
体重は4kg近く戻せた。体調も万全だし、気持ち良く試合に迎える。
今回の試合会場は有明アリーナ。
一番お高い席は20万ぐらいするらしい。
そんな額を支払ってまで俺の試合を見に来てくれるのには感謝しないとな。
ボクサー自身が自腹で招待する席とかもあるみたいだけどね。俺は学校の友達をそこそこの席に招待している。デビュー2戦目からずっと応援しに来てくれてるんだけど、俺が人気になると席の値段も上がる訳で。
流石に高校生のお財布には厳しい額なのだ。一番安い所で3万ぐらいするみたいだし。
俺はファイトマネーが有り余ってるし、スポンサーとかも合わせると、高校生にしては結構なお金持ちなので。
友達を自腹で招待するぐらいなんてことないね。まあ、みんなから気持ち程度のお金はもらってるけど。俺は応援しに来てくれるだけで万々歳なのです。
俺は控え室の椅子に座って、ヘッドフォンをつけながら音楽を聴いて集中力を高める。
勿論聴いてる曲はルトゥールだ。試合前にテンションを上げるにはピッタリである。
「時間だ」
父さんに肩を叩かれて、ヘッドフォンを外す。入場する時間になったらしい。
控え室にもテレビカメラが入ったりしてるから、馬鹿な事は言えない。
「行くかー」
次にここに帰ってくる時は2階級制覇のチャンピオンだ。
『さあ、まもなく始まります、WBAスーパーライト級タイトルマッチ。チャンピオンのケヴィン・ロペス選手、挑戦者である皇拳聖選手、どちらも無敗の選手です。まずは挑戦者である皇拳聖選手の入場です』
会場が真っ暗になり、俺の入場曲が流れる。心が湧き立つような、それでいてゾクゾクするようなメロディがたまりませんな。
『ここまで5戦5勝5KO。18歳の若き青年が二つ目のタイトルに挑みます。入場曲と皇選手の相手を倒す時のパンチの嵐に準えて『歩く災害』と呼ばれてるとの事。今日もパンチの嵐を見せつける事が出来るか』
フンフンと鼻歌を歌いながら、ノリノリでリングインする。この曲を聴いてたら負ける気がしなくなるね。
『対するチャンピオンは、堅実な守備と相手を的確に捉えるパンチ。『スナイパー』の異名を持つ無敗のチャンピオン。今日、どちらかに初黒星がつくことになります。進化を続ける災害にスナイパーはどう対処するのか』
俺がリングに上がって、四方に向かってぺこぺこしてると、チャンピオンも入場してきた。
リングに上がったチャンピオンを見ると、昨日より体が一回り大きく見える。
相手もリカバリーはバッチリらしい。
昨日は父さんの方をチラチラ見てたけど、今日はそんな事はない。ずっと俺の方を睨みつけてる。
「昨日はなんだったんだろうね。まあ、なんでも良いけどさ」
やる気満々でなにより。
ボコボコのボコにしてやるぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます