第92話 やっぱり地獄
「海だー!」
「だー!」
「だ、だー!」
奄美大島に到着しました。
お約束通り、しっかりと海に向かってワンボイス入れておく。俺と聖歌はノリノリで。孤南君は恥ずかしそうにノッてくれた。
「うわぁ。綺麗な海ですね!」
「しかも煩わしい人混みもない。完璧だ」
孤南君は波打ち際で、パシャパシャと写真を撮っている。
さっきから当たり前のようにいる孤南君だけど、ちゃんと親御さんの許可はもらいました。地獄へようこそ。
ふっふっふっふ。
楽しんでるのも今のうちだぜ。
明日の朝からこれでもかってぐらいの地獄を味合わせてやる。先輩風を吹かしまくってやるぜ。
「ぜひゅー、ぜひゅー、ぜひゅー」
「ふむ。重りを用意して正解だったな。しっかりやり切ったじゃないか」
朝の6時。
4時から始まった砂浜ダッシュが終わった。
今まで同様砂浜でのダッシュとランニングを繰り返す予定だったんだが、父さんは俺に重りを装着した。
「そろそろ砂浜ダッシュも慣れてきたかと思ってな」
とりあえず合計5kgの重りを付けられて、ダッシュ開始。
孤南君の前だからカッコ悪い真似はみせられないぜと張り切ってたんだけどね。
なりふり構ってられないぐらいキツい。
正直たかが5kgだと思って余裕をぶっこいていた自分に右ストレートを叩き込んでやりたい気分だ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
孤南君も相応にバテてる。
ちゃんと彼専用の練習量になってるんだけどね。父さんは普段の練習から、ギリギリのラインを計算してやらせている。
ある程度息が整ったら、ひたすらシャドーボクシングだ。俺は頭の中でケヴィン選手を思い浮かべて、シミュレーションしながら行っていく。
これがまたキツいんだ。
逐一休憩を挟むとはいえ、二時間ひたすら動いてパンチを打ちっぱなしだからね。
孤南君もここまで長時間シャドーをやった事がないからか、汗を大量に流してかなりキツそうな顔をしてるが、頑張ってる。
そして8時になると朝食。
4時に起きた時に軽く食べてるけどね。
本格的な食事はこの時間だ。
「拳聖さんはよく食べられますね…」
「食わないともたないからな」
俺は用意された朝食をもしゃもしゃと食べる。正直、俺もあんまり食べられる訳じゃないけど、せっかくトレーニングしたんだから食べないと勿体ないからね。
孤南君は全然食が進んでない。軽くでも食べておいた方が良いぞ。食べるのも立派な練習だ。練習後にどれだけ食べて血肉に変えれるかも非常に重要だからね。
まあ、無理に強要するとパワハラになっちゃうから、頑張れっ応援するしか出来ないけど。
で、ここからはとりあえずお昼まで自由時間。仮眠を取るも良し、ダラダラするも良し。体を休めて午後に備える。
そして12時頃になると昼食を食べて海で遊ぶ。孤南君が聖歌にうつつを抜かさないがしっかり監視しつつ、聖歌と一緒に遊びまくる。
で、17時ぐらいになると練習再開。
毎年やってる、砂浜でのボールキャッチ。
今年から俺はボールが2球になった。
ただただ地獄。
孤南君の前じゃなかったら絶対に音を上げてたね。父さんは相変わらず鬼畜な場所にボールを投げるし、2球になった事で手伝ってくれる母さんも中々に厳しい。
去年までの練習が可愛く思えてくるね。
「服部君は体重移動がまだまだだな。もっと足の親指を意識して動こう」
「は、はい」
「砂浜でダッシュしてる時から意識してるとコツは掴みやすいと思う。センスは悪くないからこの調子で頑張ろう」
少し離れた場所では孤南君も大の字になって倒れている。この練習はマジでキツいからなぁ。
その後はひたすらスパーリングだ。
父さん相手にやってるんだけど、現役を退いたとは思えないぐらいのスピードで動いてくる。
途中、リングの外から投げられるボールも避けつつ、次は孤南君。
孤南君との相手は俺だ。
父さんがやると思ってたのに、そんなに体力が続く訳ないだろって言われちゃいました。俺もそろそろガス欠なんだが。
孤南君とのスパーリングは初だが、もちろん会長の許可はもらってるらしい。
それに手加減もちゃんとする。
俺はなるべく威力を落としたパンチをする事になるから、必然的にパンチのスピードは落ちる。これはこれでどうやってパンチを当てるか考える事になるから、良い練習になる。
「シュッ!」
中々鋭いジャブを打ってくる。
勿論プロと比べるとまだまだだけど、始めて1年未満でこれは中々凄いんじゃないかな。
そして3分が経つと孤南君と入れ替わりで父さんがリングに上がってくる。
あれ? 俺の休憩は?
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