第91話 合宿へ


 「ふっ。とうとう覚醒しちまったか」


 期末テスト終了。お疲れ様でした。

 なんと全科目で50点以上をマーク。俺もとうとう秀才の仲間入りを果たしたんじゃなかろうか。


 「あれだけパスがあって半分しか取れないのか…」


 「半分取れたら快挙でしょうよ」


 「いや、今回のテストは平均点が滅茶苦茶高かった筈だぞ?」


 そう。先生方は多分俺に気を遣ってパスをしてくれたんだけど、他のみんなにも恩恵はいくからね。そりゃ、平均点は上がるってもんよ。


 だから、俺の学年順位はあんまり変わってない。まあ、俺は赤点じゃなかったらなんでも良いんだけど。



 そんなこんなで夏休み。

 勉強に付き合ってくれた龍騎にお礼のご飯を奢って、その後はひたすら練習漬けだ。


 特に変わった事はしない。ひたすら基礎を磨く。車谷さんとのスパーリングで覚えたフットワークや相手の誘導の仕方はもっと研鑽して、自分の型にしていく必要がある。


 地道な訓練をコツコツと。体に染み込ませるように、それでいて惰性で適当にならないように続けていくだけだ。


 まあ、変わった練習として、強いて言えばパンチの弾き方を工夫する事ぐらいかな。

 あれをモノに出来れば武器が一つ増える。並行して頑張っていこう。



 「奄美大島に孤南君を?」


 「ああ。桃山達は仕事の兼ね合いで連れては行けないが、服部君はまだ中学生だろう? 向こうの親御さんが許可するなら連れて行ってやろうかと思ってな」


 家でみんなで晩御飯を食べてると父さんがそんな提案をしてきた。


 そろそろ夏休み恒例の家族旅行兼合宿の時期だ。今回も体をいじめ抜いてやるぜと気合いを入れてたんだけど、確かに孤南君が来ても面白そうだ。一緒に地獄を分かち合いたい。


 俺は棒棒鶏を食べながら賛成する。


 「良いね。孤南君にも真の地獄ってのを味わってもらおう」


 「親御さんの許可がもらえたらの話だぞ? いくら俺と美春が同伴するとはいえ、中学生を1週間もお預かりする事になるんだ。ちゃんと理解を得ないとな」


 確かにな。

 聖歌が中学生になって、1週間も泊まりに行くって言ったら、保護者が居るって言われても断固拒否するだろう。男と女で違いはあるかもしれんが。


 「服部君が聖歌に手を出すようならドラム缶にコンクリート詰めで沈めるが」


 「当然だ」


 「? 聖歌がなにー?」


 オムライスを美味しそうに食べてた聖歌は、突然自分の名前が出てきてキョトンとして首を傾げてる。可愛い。

 母さんはやれやれって感じで呆れてる。


 「聖歌は可愛いねって話だ」


 「えへへ」


 中学二年生と小学四年生。

 こうして見ると犯罪臭が凄いけど、歳の差は四つなんだよね。大人になったら割とあるカップル年齢差なんじゃないかな?


 前世からずっと彼女いない歴=年齢のチェリーボーイの俺には良く分からんが。前世の年齢とトータルすると魔法使いになれてもおかしくない。


 あ、待てよ? そういえば孤南君は彼女居るって言ってたな? それなら大丈夫か。


 「まっ、それもこれも親御さんの許可をもらってからだな。明日ジムで聞いておくよ」

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