第89話 優秀な人
いつもは電話で教えてくれるか、直接会って対戦相手が決まったと教えてくれるのに、今回は誕生日プレゼントって事で、白鳥さんが粋な演出をしてくれた。
早速対戦相手、アメリカのWBCスーパーライト級チャンピオンである、ケヴィン・ロペス選手の情報を漁る。
プロ22戦で22勝0敗14KO。
現在のWBCスーパーライト級の王座を五回防衛している素晴らしい選手だ。無敗だぜ無敗。俺もそうだけど、20戦以上やって負けてないのは凄いと思う。
黒人特有の強靭な身体に、しっかりとした技術もある。スピードはリュカ選手の方が速いけど、パワーと技術はこの人の方が上かな。
白鳥さんにお願いする前に軽く映像を見て、どの選手もみんな同じくらいの強さだと思ったけど、この人の映像をしっかり見てみるとその強さがはっきり分かる。
「なんかあれだね。父さんに似てるね」
「そうか? 俺はクルに似てるなと思ったが」
車谷さんも父さんに似てるもん。
あの人は父さんのファンって言ってたから、自然に似ていったのかもしれないけど。
父さんに似てるって事は、基本がとてもしっかりしてるという訳で。滅茶苦茶真面目な選手なんじゃないかなって思う。
顔は滅茶苦茶怖いけど。偏見みたいな言い方になっちゃうけど、黒人の人ってみんな怖い顔をしてない? それでいて性格が可愛かったりしたら、胸をグッとやられるんだ。動画サイトでそんなのを良く見ます。
「父さんをスパーリングパートナーにしたら対策出来そうだなぁ」
「馬鹿野郎。今お前のパンチを受けたら、俺は死んじゃうぞ」
「またまた〜。まだ全然戦えそうな体してるくせに」
父さんは現役時代より体重は増えてるらしいけど、太ったって感じじゃなくて、がっしりしたって感じなんだよね。
正直フェザー級で引退じゃなくて、スーパーフェザー級も目指せてたんじゃないかって思うけど。
「またクルに相手してもらうって手もあるけどな」
「あの人は今忙しいでしょ」
バンダム級の世界チャンピオンである車谷選手。あの人はバンダム級の王座を返上して階級をスーパーバンダム級に上げた。
そして約一ヶ月後にタイトル戦だ。とてもじゃないけど、お願いなんて出来ないね。
「終わってからとかならワンチャンあるかな」
「向こうの試合のダメージ次第だな」
俺の試合は九月の末に行われる。
六月半ばだから大体三ヶ月後かな。
それまでに車谷さんと良い感じにスケジュールが合えば是非お願いしよう。
「さてさて。とりあえず過去の試合を全部見返していこうかね。白鳥さんがデビュー戦から最新のまでの試合映像を全部用意してくれたし」
「白鳥さんは代理人だろ? そんな事までやってくれるのか? 俺が今から用意しようかと思ってたんだが」
まあ、代理人の仕事ではないのかな?
ちょっと俺には分かりませんよ。代理人の詳しい仕事内容もあんまり分かってないし。
試合をマッチマイクしてくれる人って思ってます。
映像とか用意するのは会長とかトレーナーである父さんの仕事のような気もするような? もしくは俺が自分で集めるとか。
よく分からんけど、白鳥さんは優秀な人で俺は毎回助かってますって事だ。
「夏には恒例の奄美大島合宿もやるし、更にレベルアップした皇拳聖をお見せしてやろう」
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