第84話 反響
試合翌日。
試合が日曜日だったから、今日は普通に学校だ。休もうかと思ったけど、もうすぐテスト一週間前。ここ最近は減量のせいでまともに頭が働いてなくて、授業の事なんて全然覚えていない。チンピラに泣きつくにしても、どこを泣きつけば良いか分からないのは問題だ。ちょっと体はだるいけど、しっかり登校せねばなるまい。
「わはははは!」
で、朝の朝食の時間。
リビングでママ上やパパ上、大天使に体調を心配されながらテレビを見てると俺が出ていた。スポーツニュースは俺の話題で一色だ。とても嬉しい。
因みに昨日はチャンピオンベルトと一緒に寝ました。余韻が凄くて寝れるか心配だったけど、抱きしめながらグッスリですよ。
「新聞も一面だ。素晴らしい。これは永久保存させてもらおう」
「ちゃんと保存用も買ってあるぞ」
父さんは取っている新聞以外にも、朝一でコンビニに行って新聞を買ってきてくれたらしい。ありがたい。立派な親バカですな。
「わー! すげー!」
学校に行くとなんと垂れ幕が。
『皇拳聖! WBCライト級世界チャンピオンおめでとう!』って書いてある。
こういうのって、自校の部活動だけと思ってたんだけど、わざわざ用意してくれたらしい。
早速写真を撮って自分のSNSにアップする。
なんかフォロワー数が激増してる。しょーもない事しか呟いてないんだけど。
炎上するような事は呟いてないから大丈夫だと思いたい。
ネットリテラシーについては父さんと母さん両方からしっかりとご指導頂いてますからね。母さんなんて最早その道のプロだ。
「拳聖おめでとう!」
「カッコよかったぞ!」
「次の試合も観に行くからな!」
校内に入るとそれはもう人気者である。
まるで芸能人になった気分だ。事務所と契約してるから、俺は芸能人なのかもしれないが。その辺の違いはよくわかりません。
本当は朝のニュースとか出演して欲しいみたいな依頼があったみたいなんだけどね。
なんか世界チャンピオンになったり、タイトルを防衛した翌日に、朝のニュースに出るのがボクサーの定番みたいになってるらしいし。
しかし残念。
俺はまだ高校生なので。
成績が優秀なら何日か休んでも問題ないんだが、俺は勉強の出来がすこぶる悪い。
休むと勉強についていけなくなって留年しちゃうのである。
そういうのは高校を卒業して、ボクシングに専念出来るようになってからかな。
後一年の辛抱です。
そしていざ問題の授業。
やっぱりちんぷんかんぷんである。
なんか減量で意識が飛んでる間に、意味の分からないぐらい進んでいる。これは非常にまずいぞ。
「ここ、テストでるぞー」
「この辺はしっかり勉強しておいた方がいいでしょうね」
「ここ! とっても重要! ここ! ここですよ! しっかり復習しておいてください!」
なんかどの科目の先生も露骨にパスしてくれてる気がする。あからさまに俺に視線を向けて要チェックやでとばかりに強調してくる。ありがてぇ。
でもね。その言ってる内容が全く分からないの。とりあえずしっかり板書はしてるけども。とりあえず出るって言われたところとか、匂わせてきたところは赤文字で書いておいた。
後はチンピラにお願いしよう。
せっかく世界チャンピオンになったのに、赤点を取ってしばらく試合は出来ませんはシャレにならん。
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