第83話 戴冠
第7Rが始まった。
前のラウンドと同様、リュカ選手が開始と同時に仕掛けてきた。が、キレがない。やっぱりボディのダメージが残ってる模様。
ふはははは!
俺のターン継続!
ずっと俺のターン!
ジャブが当たる当たる。
本当はいたぶってやりたい。
でもそんな舐めプをして時間を掛けてやってるとダメージが回復してしまうかもしれない。一気に決めさせてもらう。
ジャブを見せてインファイト。
接近して相手を逃さないようにし、そこからは猛ラッシュだ。
『皇のパンチが止まらない!! 一気に勝負をかけた。チャンピオン防戦一方! 皇! 世界チャンピオンは目前だ! チャンピオン耐える耐える! あーっと! ボディが突き刺さった!!』
ガードが固い。なんとか顔面を殴ってやりたいんだけど、中々こじ開けられない。
ガード越しでもお構い無しに殴ってるんだけど、これだけは譲れんとばかりにガードが開かない。
それなら前のラウンドの苦しみを思い出してやるよと、顔面のガードに集中していた間隙を狙って右ボディ一閃。
苦悶の表情を浮かべるリュカ選手。
流石にガードが少し空いた。右ボディフックからの顔面への左フックは避けられるも、右アッパーで顔面をかちあげる。
「クハッ!」
たたらを踏みながらもギリギリ堪えるリュカ選手。でも視点が定まっていない。これは審判が止めるかと思ったけど、その気配はないので続行。
『右アッパーが完璧に入った!! チャンピオン耐える! チャンピオンの意地か! まだ倒れない! しかし皇のラッシュは止まらない! 暴風雨! まるで嵐のようなパンチのラッシュだ!』
視点が定まってない、半分意識は飛んでるだろうにガードはしっかりしてる。
俺はお構い無しに殴る。そして、ガードの間に隙間が空いた。
そこに俺は渾身の右ストレートをぶち込んだ。
『ダウーン!! 皇の右ストレートがクリーンヒット!! レフリーはカウントしない! 手を大きく振った! 試合終了だ! 試合終了だ! 皇! 世界チャンピオンです!! 現役高校生が快挙を成し遂げました!!』
最後は吹き飛ぶようにリングの上で大の字になって倒れたリュカ選手。
快感。滅茶苦茶気持ち良い。人を殴り飛ばして何を言ってるんだと思われるかもしれないが、そう思ってしまったんだから仕方ない。ボクサーは人を殴るのが仕事ですし。
「ははははっ」
審判が試合終了の合図をした。
何故か思わず笑ってしまった。
「よっしゃおらー!!!」
そして俺は両手を挙げてガッツポーズ。
滅茶苦茶嬉しい。世界チャンピオンだ。
小さい時にみた父さんの姿。ようやくここまできたぞ。
「拳聖!!」
「うぇーい!!」
父さんが笑い泣きながらリングに上がって走って来た。
「やったな! やったな!」
「わはははは! やったぞ! 世界チャンピオンだ!」
父さんが泣いてるもんだから、思わず俺ももらい泣き。泣くつもりは無かったのに。
本当だよ? もっと澄ました感じで、これは通過点ですみたいなスタンスでいようと思ってたんだ。
うそ。滅茶苦茶嬉しい。
だめだ。嬉しさが込み上げてくる。
『さあ! 新チャンピオンの皇選手に今!! チャンピオンベルトが巻かれました!!』
その後もワイワイしてたけど、とうとうメインディッシュ。
「わはっ…わははは」
上手に笑えない。
せっかく涙が引いてきたのにまた出そう。
俺は今、世界で一番幸せだ。
「おめでとう、拳聖」
「ありがとう」
ベルトを巻いて父さんと一緒にリング上で記念撮影。その時に父さんがボソッと祝福してくれた。涙腺が崩壊しそうだ。
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