第82話 VSライト級リュカ5
「シッ!!」
なんか慣れてきた。
最初は速さに戸惑ったものの、ディフェンスに専念して捌き続けてるとあっという間に慣れた。これなら反撃も出来そう。
って事で、相手のパンチの切れ間にパンチを返していく。もう少し慣れたらカウンターも合わせられそうだけど。
捌く捌く捌くパンチ捌くパンチ捌く捌く。
偶にパンチを弾く動作を見せるとリュカ選手は止まる。その隙に一歩詰めてボディ。
フェイント入れて更にボディ。
「がっ!」
おほー!! 露骨に顔を顰めましたな!
どうやら今のボディは当たりどころが良かったらしい。蓄積されたダメージもあるんだろうけどね。でもそのお陰で、ラウンド序盤から飛ばしてたリュカ選手の足が今のボディで止まった。
「シッ!」
攻守交代じゃい!!
俺は一気にインファイトに持ち込んでパンチをまとめる。リュカ選手は息切れしたのか、明らかに動きが鈍い。
焦らず大振りにならないように気を付けつつ、リュカ選手をどんどん押し込む。
逃げ場をなくす為にコーナーまで押し込みたいところだったけど、流石にそこまでは許してくれないらしい。
でもロープ付近までは追い込んだ。
ここからはずっと俺のターンだ。
リュカ選手は今の足じゃ逃げられないと思ったのか、グッと踏ん張って応戦態勢。
俺は一歩踏み込んでジャブを打とうとしたが、リュカ選手はそれに合わせてカウンターを打ってくる。
ジャブを途中でキャンセルして、リュカ選手のパンチをスウェイで躱す。その姿勢のまま前に出てきていたリュカ選手の顎をアッパーで捉える。
「ガッ!」
顎をかち上げてクリーンヒットはしたものの、態勢が不十分だったせいでそこまでの威力はない。すぐに態勢を戻して、そのまま左フックを顔面に放つフェイント。
リュカ選手はすぐにガードを固めたが、右のフックをガラ空きのボディに叩き込んだ。
そしてリュカ選手はそのままリングに蹲るようにダウンした。
「ダウン!」
審判がすぐに割って入ってきてカウントが始まる。
「ワン! ツー! スリー!」
あの右フックのボディは会心だった。
かなり肉を抉ったような感覚。正直気持ち良かった。癖になりそう。
「フォー! ファイブ! シックス!」
このまま試合が決着したら楽だったんだけどな。残念ながらリュカ選手は立ち上がろうとしてる。でも、かなり顔がキツそうだ。
カウントがエイトの所でリュカ選手は立ち上がる。そしてファイティングポーズを取った。
そして審判が試合を再開した瞬間にゴングが鳴って第6Rが終了した。
「ふぃー。仕留めたかったー」
「こればっかりは仕方ない。それにしても前半は良く耐えたな。俺はてっきり拳聖は応戦すると思ってたぞ」
セコンドに戻って用意された椅子に座る。
うがいで口を潤しながら父さんの話を聞く。
「いや、速さに戸惑って正直それどころじゃなかったのが本音。応戦する隙がなかったんだ。すぐに慣れたけど」
「そうか。まあ、それが功を奏したな。次のラウンドから向こうは足が止まるぞ。あのボディを食らってまともに動ける筈がない。立ち上がったのにも驚いたくらいだ」
俺も。あのボディを俺が食らったら立てるだろうか。日々スパーリング三銃士にボディ打ちをしてもらって鍛えてるけど、あの会心のボディはきつそう。
とりあえず次のラウンドでもう一回狙ってやろう。向こうも食らいたくないから、ガードを固めるだろうけど、そうなったら顔面へシフトチェンジだ。
ようやくあのにやけ面をブン殴れるぜ。
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