第81話 VSライト級リュカ4
「スタミナはどうだ?」
「そんなに動いてないからね。フルラウンド戦っても大丈夫だよ」
試合は進んで第5Rが終わった。
第2Rからボディ狙いをひたすら続けている。もっと積極的に攻めたい。焦ってはいけないと思ってるけど、中々ストレスが溜まる。
「我慢比べだぞ。相手のスピードは実際に落ちてきてるんだ」
「分かってる」
「相手はこのままだとまずいって分かってるはずだ。絶対にどこかで無茶をしてくる。そこを狙え。集中を切らすなよ」
「あいさー」
俺の地道なボディ攻めは確実に効いている。フリッカーとノーマルジャブを混ぜての攻撃にリュカ選手も対応に苦労してるから、しっかり当たってるんだ。
ジャブはぽこぽこ当たるようになってきた。後は決め手のパンチをどこで当てるか。
勝負所を間違わないようにしないとな。
そしてゴングが鳴って折り返し地点の6Rが始まる。このRもネチネチとそれはもうネチネチとボディ攻めをしてやろうと思ってたんだが。リュカ選手はギアを一段どころか、三段ぐらい上げてきた。
「はっや!」
突然のスピードアップに戸惑う。
今まで手加減してたんですかってぐらいのスピードだ。パンチのスピード、移動のスピード、全てが段違い。
それまでのスピードに慣れてた俺は戸惑いながらも対処する。とにかく今はディフェンスだ。最悪このRはポイントを取られても構わない。相手だってこのギアチェンジにはリスクがあるはずだ。ここで仕留め切らないと、残りをガス欠で戦う事になる。
間違っても対抗しようとしてはいけない。それでは相手の思う壺だ。スピード勝負では相手の方に分がある。対抗したい気持ちをグッと堪えて冷静に対処だ。
いいようにやられるのはムカつくけどね。そんなちっぽけなプライドより勝利を優先させてもらう。
「ハッ!」
ジャブ、ストレート、フック、アッパー。
色んなパンチを打ってくるが、クリーンヒットだけは貰わないようにディフェンス。
正直あんまり余裕はないけど、これは勉強になる。この試合で俺は更なる成長をさせてもらうぞ。
☆★☆★☆★
「ちっ! 乗ってこねぇか!」
このRはリュカに勝負を仕掛けさせた。
ポイントでもリードをされてるし、リュカは我慢してるが、ボディのダメージが予想以上に大きい。
とても12Rまで戦う余裕がない。
それなら、早めに勝負を仕掛けてガス欠になる前に倒す。リュカは一発があるタイプのボクサーではない。それでもパンチをいくつかまとめて当てると倒す技術はある。
「まだ17歳だろうが。なんて大人なプレーをしやがる」
そしてこのギアチェンジに相手は乗ってくると思っていた。相手もムキになって、対抗してくると踏んでたんだ。
試合前から、そして試合中もリュカと皇は相容れない存在かのように嫌悪し合ってた。
そんなリュカからの挑戦状にあっさり乗ってくると思ってたんだが。
セカンドからの声が来る前に自分であっさり判断して、守勢に回りやがった。
ベテランならその判断も理解できるが、皇はまだ17歳。成人もしちゃいない。
「参ったな。このRのポイントは取れるかもしれんが、間違いなくリュカの方が先にバテるぞ」
皇の性格を見誤ったか。
リュカにはなんとかあのディフェンスを掻い潜ってもらわねぇと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます