第77話 出来すぎ
横浜アリーナでの世界タイトル挑戦。
今回は勿論俺がメインである。
しかしその前に前座と呼ばれる試合がある。そう、スパーリング三銃士の試合だ。
俺は途中から減量のイライラで、手加減が全く出来ない状態に陥ったので、途中で相手出来なくなったが、それまでは対戦相手の映像を見て、出来るだけ相手を模倣したスパーリング相手になっていた。
いつも俺の練習に付き合ってくれているせめてもの恩返しだ。
そしてそれは結果に如実に現れている。
「三人共KO勝ちって出来すぎだろ」
「序盤はあたふたした展開が続きましたけど、中盤以降は終始ペースを握ってました。これで三人共日本ランカーですよ!!」
控え室で一緒に見てた孤南君が興奮気味にきゃぴきゃぴしてる。童顔な見た目も相まって可愛い。これは性癖を破壊される貴腐人の方もいらっしゃるんじゃなかろうか。
「珍しく会場を盛り上げてくれたんだし、これで俺が続かない訳にはいかないな」
「頑張って下さい!! 応援してます!」
任せろい。減量での苦しみを全部相手にぶつけてやる。リカバリーも完璧だし、一気に体重も戻った。スピードスターだか、なんだか知らんがタコ殴りにしてやる。
☆★☆★☆★
「ケンセーは強そうだったねー」
「強そうじゃなくて強いんだ。俺はあの目で見られたとき、殺されるかと思ったね。お前が馬鹿みたいなちょっかいをかけるからだ」
「しょーがないじゃーん。なんか言わないとダメな気がしたんだ」
控え室にて入念に準備をしているリュカを見る。口調は砕けてるが、その目は真剣そのもの。油断をしてる様子は一切ない。
「相手は減量で苦しんだみたいだがどうなるかな」
「あれが減量で苦しんだ体ー? 冗談はやめて欲しいね。無駄を全て削ぎ落とした筋肉の鎧みたいだったじゃん」
皇はライト級にしてはサイズが大きい。17歳で成長期ってのもあるんだろうが、まだ身長が伸びてるという情報だった。
それなら減量で苦しむのではと思ってたんだが。いや、実際かなり苦労したという情報は得た。しかし、計量の時に見たあの体はとてもじゃないが、そうは見えない。
これ以上はない仕上がりだったんじゃないかと思えてくる。
記者会見の時は終始穏やかそうに見えたが、最後の二人並んでの写真の時の奴の目。
チラッと見られただけだったが、生きた心地がしなかった。顔は笑ってるのに、目が全然笑ってない。あれは捕食者の目だ。
決して17歳がしていい目ではない。
メキシコではああいう目をした奴をよく見る。日本みたいに生活が裕福ではないからだ。常に敵と隣り合わせの様な日々を過ごせばああいう目になる。
しかし日本でぬくぬくと育った奴にあんな目が出来るとは。一体何に飢えてるのか。
「対策はこれ以上ないほどにしたと思うが。相手が前回の試合からどれだけ成長したか未知数だからな」
「とりあえずフリッカーはなんとかなると思うなー。実際に見てみないと分からないけど。それは試合で順応していくしかないよねー。後はスピードでどこまで攪乱できるかなー」
こっちが明確に有利なのはスピードだ。
それだけは負けてはならない。序盤でスピードで攪乱し、一気にペースを握って判定勝負。これが一応の試合のプランである。
「あ、終わった」
「そろそろか」
モニターを見てると、また一つ試合が終わった。決戦の時間はまもなくだ。
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