第75話 地獄
「腹減ったーうぇいうぇい。腹減ったーうぇいうぇい。腹減ったーうぇいうぇい」
試合まで後二週間。横浜アリーナで俺ちゃんがメインだぜ!! わはははは!!
………無理矢理テンションを上げてるんだけど、とにかくお腹が空いた。ご飯は一日一食になったし、炭水化物も白飯をほんのちょろっと。後は野菜とささみがメイン。
今はまだテンションで誤魔化せてるけど、そろそろヤバい。なんか自分でもピリピリしてきてるなってのが分かる。
なんたって聖歌が俺と距離を取るぐらいだからね。天使成分を摂取出来ないのは辛いけど、離れてくれるのは助かる。
八つ当たりしちゃうかもしれないし。
これでも俺はまだ普段からなるべく体重を増やさないようにしてる方なんだけどね。
好き放題食べるのも試合が終わってから、ちょっとの間と減量を本格的に始める前日のみ。
中には一ヶ月で15キロぐらい落とす猛者も居るらしい。俺は10キロでヒーヒー言ってるんだが。
「絶食は出来ればしたくないからなぁ」
残り二週間で5キロ。まぁ、順調に進んでるとは思う。最後の水抜きまで計算すれば、良いペースだと言える。この調子で頑張ろう。
地獄の二週間が始まった。
試合まで残り一週間。練習も軽めになってきて、最終調整の段階。
それなのに急に体重が落ちなくなった。
「後3キロから減らない」
「拳聖はほどんど無駄な脂肪は落とし切ってるからなぁ」
これはまずい。現段階でもうほとんど皮と筋肉しか残ってないんだが。
ここから後3キロはきつすぎないか?
その日から水分を制限。
飲まない事はないが、ちょっとずつ減らしていく。炭水化物系もちょびっとだけ摂取。
なるべく筋肉は分解させたくない。
リミットまで1.5キロ。
試合は日曜日で、今日は水曜日。
前日計量だから、土曜日までに体重を落とし切らないといけない。
「頭がぼーっとするー」
一応学校には通ってる。
ほとんど内容は頭に入ってないが。
今勉強に糖分を使いたくない。
クラスメイトはみんな良い奴らばっかり。
試合を見に来てくれるのはもちろん、いつもなら休憩時間とか、お菓子を食べたりしてるのにそれがない。
本当に助かる。今目の前でお菓子とか食べられたら発狂するかもしれない。
動画でボディビルダーとか、フィジークの選手が減量末期とかに、目の前で大食いされるのとかあるけど。
俺、そんなんされたら間違いなく縁を切る自信がある。ボコボコにしちゃうかも。
あれを笑って許せるのがすげぇよ。尊敬する。匂いですらやばいからね。
「体に悪いモノを食べたい」
こってこての二郎系ラーメンとか、油ギットギトのステーキとか。
マク◯も食べたいし、甘いもんも食べたい。
試合が終わったら絶対爆食いだ。
好きなもんをしこたま食ってやる。
金曜日。
無である。何も考えられない。
学校も休んだ。ひたすら家でじっとしてる。水抜きと代謝で残りの体重を落とす。
喉が渇いてもうがいで我慢。
携帯で動画を垂れ流しながら、ひたすらぼーっとする。早く明日になってくれ。
リミットまで残り200グラム。多分寝て起きたら落ちてるはず。朝にリミットまで落ちてなかったら、少しでも汗を出すためにサウナに入らないといけない。
計量当日。
夜はスパッと寝れた。
寝れる才能って素晴らしい。気付いたら翌日になってるんだもん。
「ふはぁ」
体重計に乗って安堵する。
リミットより100グラムぐらい余裕があった。
「あーやり切った。やり切った」
「お疲れさん」
減量ってこんなにきついんだな。
マジで早く階級を上げたい。とにかく水が飲みたい。早く計量を終わらせようぜ。
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