第72話 スパーリングの終わり
「フッ!」
「くっ!」
当たる当たる! パンチが当たるぞ!
一週間経って更に俺の足捌き、はたまたパンチでの誘導に磨きが掛かってきた。
この三週間は翻弄されっぱなしだったのに、互角の勝負が出来てるんじゃないかと自負している。
階級が全然違うから互角の勝負ってのは不味いんじゃないかと思うが。
それはそれ。まだまだ付け焼き刃の域を出ないから。もう少し熟練させていく所存です。
「一週間でこんなに伸びるなんて…。末恐ろしいね」
「ありがとうございます!!」
俺的にはまだまだ完成してないけどね。それでもクリーンヒットをいくつか当たる事は出来た。グローブの関係とヘッドギアがあるからダウンさせる事は出来なかったけど。
「拳聖君は当て感とカウンターが本当に凄いよ。教える立場と思ってきたのに、この一ヶ月は随分勉強させてもらったよ」
「そう言って頂けるとホッとしますね」
ほんとに。一ヶ月、週に一回わざわざ俺の為に来てくれたんだ。俺だけがもらってばっかりじゃ申し訳ない。
「うん。そのカウンターは間違いなく世界でも通用するよ」
「カウンターで仕留める戦法をいくつか考えておかないとですね」
世界チャンピオンにそう言って頂けると自信になりますな。もう少し相手の大振りを誘う戦法を考えるか。
「次の相手はかなり速いんだよね? スピードに自信がある選手にカウンターを叩き込むのは快感だよ」
「そ、そうなんですね」
何故か黒い笑みを浮かべてらっしゃる車谷さん。経験ありなのかな? 確かにちょこまか動く相手をパンチ一発で止めるのは気持ち良さそう。それに固執し過ぎるのは良くないけど、チャンスがあれば狙っていこうかな。
☆★☆★☆★
「いたたたた」
「大丈夫か?」
「少しの間は腫れるかもね」
天下ジムから自分が所属するジムに帰ってきた。一緒に着いていたトレーナーに心配されたけど、すぐに治ると思う。
「いくつか良いのを貰っちゃったな。一ヶ月であんなに成長するんだね」
「お前の強がりがバレてないみたいで良かったな」
「それもまた経験のうちさ」
最後にもらったカウンターでのボディーブロー。あれは強烈だった。なんとか耐えて効いてない風を装ったけど、スパーリング後に拳聖君と話してる時も気持ち悪くて仕方なかった。
フリッカージャブも回を重ねる毎に鋭さが増すもんだから、明日は体中がみみず腫れになるんじゃないかと思っている。
「あれが17歳か。本当に17歳だよね?」
「今年で18歳だ」
高校生でアレはだめじゃないかな。
これからどれだけ成長するのか予想も出来ないよ。
「階級が離れてて良かった」
「それは思う」
来年には相手にならなくなってるんじゃないかな。拳聖君はそれぐらいのスピードで成長している。
「でも減量がきつそうだよね。まだ身長が伸びるって言ってたよ」
「既に180cm超えてるらしいからな」
ライト級の平均身長って170前半じゃなかったっけ? リーチで有利に立てるだろうけど、減量にかなり苦労しそうだなぁ。
拳聖君、筋肉質だし。
「どこまで階級を上げるんだろうね」
「重量級はきついんじゃねぇか?」
どうだろう? 拳聖君ならやってくれそうな気がする。それぐらいのポテンシャルはあると思うんだよね。
拳聖君がどこまで高みに行くか楽しみだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新作だすぜヒーハー。
体調を崩す前から書いてたんだけど、あっため続けてるのもなーと思ってとりあえず放出。
ストックはあるけど、それが無くなったら毎日更新出来るかは分かりません。
地獄からの刺客『エンマダイオウ』
競馬モノのお話です。初日は5話更新。
良かったら暇潰しに読んでくだせぇ。
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