第71話 三回目


 「うん。悪くないぞ。明日の車谷さんとのスパーリングが楽しみだ」


 「「「………」」」


 リングに屍が三つ。

 いつものスパーリング三銃士とボディを殴られての『超回復』任せの特訓と、これまた『超回復』任せの三半規管を鍛えるトレーニングをみっちりやってから、最後に三人とスパーリングをやって締めだ。


 ボディはカチカチだし、三半規管の方も順調だと思う。とりあえず吐く事はなくなった。まだフラフラはするけど。


 スパーリング前は威勢よく楽しそうに俺の事を虐めてくれてたが、今は死屍累々って感じだ。


 これでも滅茶苦茶感謝はしてるんだよ?

 自分の練習を終わらせてから俺に付き合ってくれてるんだ。

 勿論俺だって三銃士の次の試合相手の模倣をしたりして協力はしてる。


 でもやっぱり最後はこうしないと。

 好き放題殴られた鬱憤をしっかり晴らさせてもらった。


 課題の足捌きの方もまだまだ付け焼き刃だけど悪くない。明日は思う存分試させてもらおう。そして、また課題を突き付けてもらうんだ。


 「うわぁ…」


 「あ、孤南君」


 孤南君が三人の様相を見て引き気味に声を上げる。孤南君もそろそろ俺とスパーリングやっても良いんじゃない?

 心なしか体ががっちりしてきたように見えるし、基礎もだいぶ出来てきた。


 会長からまだ早いって止められてるから出来ないんだけどね。出来るようになった時が楽しみだ。




 「ここだね。ここでのストレートがいけない。映像で見たら分かるだろう?」


 「そうですね。思い切り誘導されてます」


 「まぁ、そのカウンターを避ける拳聖君に驚いたけど」


 翌日。三回目のスパーリングが終了。

 二回目よりはマシになったが、まだ良いようにやられてる感覚。


 で、いつもはスパーリングが終わったら自分で課題を見つけろよって事で、アドバイスとか無かったんだけど、今回はスパーリングが終わった後に、一緒に映像を見てる。


 ダメな所を指摘してもらったり、はたまた普通に意見交換したり。かなり勉強になる。

 孤南君も一緒に聞いててノートまで取ってるからね。


 「とにかく考えるのをやめない事。拳聖君はなまじ才能があるから、その才能だけでこれまではなんとかなってきたけどね。頭を使えばもっと楽しくなるよ」


 「自分の中では結構考えてやってたつもりなんですけどね。まだまだだって思い知らされました」


 「あははは。まぁ、こればっかりは経験も必要さ。拳聖君はアマもほとんどやってないんだろう? プロのキャリアもまだ4戦。これから積み重ねていけばいいさ」


 「頑張ります」


 ほんと勉強になるなぁ。これも来週で終わりなんだよね。もったいない。

 試合がある5月まで続けてほしいぐらいだけど、車谷さんにだって練習がある。


 俺とのスパーリングも充分練習になるって言ってくれてるけど、果たしてどこまで本当なのやら。この三週間はほとんど良いようにやられてる記憶しかない。


 「じゃあまた来週ね」


 「はい。ありがとうございました」


 もっともっと頑張ろう。

 俺が世界チャンピオンになるのが恩返しになると信じて。


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 読者様にありがたいご指摘を頂きました。

 なんとクルーザー級とヘビー級の間に、団体によって違う階級があるみたいなんです。

 作者、にわか知識なので全然知りませんでした。


 どうしましょうかね、これ。

 面倒だから無しにするか、キリよく10階級制覇というのを目標にするか。

 WBCとWBAにしかないみたいで、それがややこしくしてる。


 一応今の所、この世界にはその階級はない設定で考えてます。結構修正しないといけないし…笑


 作者がにわかなのでこういう指摘は助かります。これからもよろしくね。

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