第68話 カラクリ
学校が終わってジムに行き、帰って来てからスパーリング映像を見て研究する。
そんな事をしてると、あっという間に1週間が経過。明日は二回目のスパーリングの日だ。
結局『ファントムパンチ』のカラクリが分かってない。こんな分かりにくいもんなのか。ここまで悩んだのは初めてだ。
「あー! 聖歌分かっちゃった!」
リビングでダンスをしていた聖歌が、テレビを見て声を上げる。聖歌は習い事でダンスをしてるんだ。で、踊りながら一緒にスパーリング映像を見てたんだけど、どうやら聖歌にカラクリが分かったらしい。
「聖歌、教えたらだめだぞ」
ソファに座ってた父さんが釘を刺す。
手にはかなりお高いカメラとビデオカメラ。
聖歌のダンス映像を熱心に撮っていた。親バカが過ぎますぜ、全く。後で俺にも下さい。
「じゃあ実演してあげるのはいいでしょー?」
なんと。聖歌は理解しただけじゃなくて、すぐに真似出来るのか? そんな難しい事じゃないのかね。誰にも出来る事じゃないって言ってたんだけど。
「出来るの?」
「多分ね! ボクシングの試合中には無理だろうけど遊びなら出来ると思う!!」
との事だ。是非やってもらおう。これで分かるかもしれん。父さんは仕方ないなって感じで頷いてるし、是非お願いします。
「いっくよー!!」
そう言って、俺と聖歌は手が届く範囲で構える。俺は聖歌が叩いてくるのを避けるだけ。
しっかり観察させてもらうぞと思ってたんだけど。
「当たったー!」
「マジかよ…」
いつくるかと構えてて少ししたらペシっと叩かれていた。いや、ギリギリ避けれそうだったけど、試合中で相手が大人ならクリーンヒットだろう。
でも完璧に理解した。本当に単純な事だったんだ。でもこれを試合中に実行するのはかなり難しいぞ? 車谷さんは当たり前のようにやってたけど、滅茶苦茶高等技術だ。
「瞬きか」
「正解だ」
聖歌にはマジで感謝だな。天使。大天使。女神。GOD。後でお小遣いあげちゃう。
父さんも現役時代にやってたらしい。瞬きの瞬間を狙ってパンチする。でもこれを試合中にやるのは難しすぎる。
相手の顔を観察してないとだし、パンチを避けながらそんな事をするなんて。
「父さんは良くこんなの出来たね」
「慣れだな。でもこのパンチも万能って訳じゃない。瞬きのタイミングに固執してると、それで誘われてカウンターを貰う事もあるし、経験で予測してパンチを躱す奴もいる。使い所が重要だな。ここぞという時に使うとっておきだ」
確かにそれに固執してくれたらカウンターを誘う事は出来そう。瞬きした瞬間にパンチが来るって分かってたら避ける事も出来るしね。それを使って相手を誘導させる事も出来そう。
おおお。なんか一気にボクシングの幅が広がったような気がするぞ。なんて楽しいスポーツなんだ。
「車谷さんは多用してたけど、あれは俺に教えてくれてたって事なのかな」
「かもしれんな。いずれ俺が教えるつもりではあったが、現役選手に自ら教えてもらった方が効果は何倍もあるだろう」
ふむふむ。なるほどね。
早速明日から『ファントムパンチ』改め『瞬きパンチ』の練習をしよう。
あ、明日スパーリングか。
丁度良いし、対策の練習をさせてもらおう。次はいいようにやられないぜ。
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