第59話 VSライト級ヘムサポ4
第7Rが始まった。
ここまで長引くと思ってなかったのが、正直なところ。長期戦は覚悟してたけど、それでも5Rか6R辺りで仕留めれると思ってた。
やはり経験が違うのか、中々隙を見せてくれない。ひたすらジャブで、時にはインファイトを仕掛けてみたものの、やっぱり後一歩のところでいなされる。
それでもひたすらジャブを打ち続けてきた結果は出てる。顔付近はしっかりガードを固められて少し腫れてる程度だが、体は真っ赤っかだ。明日はみみず腫れが凄い事になってる事だろう。
第6R終了間際にはフリッカーにも慣れてきていた様に思う。OPBFチャンピオンでも、慣れるのに結構時間が掛かった。初見でほぼ見切っていた夜木屋選手は凄いな。
この試合を通して思った事はひたすら楽しいという事。これだけ長い時間真剣勝負をした事がなかったし、自分のスキル的なサムシングがムクムクと上がっていくのを感じる。
ヘムサポ選手と戦えて本当に良かった。これで俺はまた一段上のボクサーになれた気がする。練習だけじゃ身に付かない貴重な経験を積ませてもらった。
でもそれもそろそろ終わりだ。
『おおっと! 皇!! なんとここに来てスイッチだ!!』
第6R終了間際で慣れてきてたんだ。当然相手は勝負を仕掛けてくるだろう。でも主導権は握らせない。スイッチでサウスポースタイルになり、混乱してる隙を狙って一気に決めさせてもらう。
「シッ!!」
「グッ!」
当たる当たる。慣れ過ぎるのも問題だな。今までは慣れてないながらも、顔付近はしっかりガードを固められてたのに、ぽんぽこ当たる。
『チャンピオンヘムサポ!! 急なスイッチに対応出来ない!! 皇が一気にギアを上げてきた!!』
ジャブで牽制して距離を詰める。苦し紛れにマシンガンの様なジャブを打ってくるが、さっきまでと違ってキレがない。
油断しないように、万が一にもラッキーパンチを被弾しないように、細心の注意を払いつつ、仕留めに掛かる。
お客さんもそろそろ待ってると思うんだよね。それに、俺は今日セミファイナル。メインじゃないんだ。次の父さんの大ファンだという世界チャンピオンの為にも、会場のボルテージはMAXにして、バトンを渡したい。
『さあ! 皇!! 一気に暴風域に侵入だ!! 前回の試合の様な嵐を見せてくれるのか!!??』
どのパンチも当たるという至近距離まで侵入。そこで俺はボディフックを打つフェイントをして一歩下がる。
俺がさっきまで居た場所に、相手の左フックが飛んできていた。恐らくヘムサポ選手は、ボディを誘っておいてのカウンターを狙っていたんだろう。
ここまでの戦いの中で素直にボディを打たせてもらえると思ってなくて、警戒していたのが功を奏した。
「ごちそうさまです」
ヘムサポ選手会心の一撃を躱して、左フックに被せるように、打ち下ろしの右をカウンターでこめかみに放つ。
ヘムサポ選手は糸が切れた人形の様に倒れ込んだ。視覚外からの一撃。いくらタフな選手でも耐えるのは至難だろう。
レフリーが割って入ってきて、カウントする事なく両手を大きく交差する。
『一撃必殺!! 皇のカウンターが炸裂しました!! 試合終了!! 皇拳聖!! 高校生でライト級のOPBF、東洋太平洋のチャンピオンになりました!!』
俺は片手を高々と突き上げて、観客にアピールする。むーん。声援が気持ち良い。
試合の疲れなんて一気に吹っ飛ぶね。
あー楽しかった。
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