第54話 長丁場の可能性
「わはー!」
クリスマスプレゼントにもらったパーカーを着て入場。これだけでなんか強くてなった気がする。
それに。
登場曲も今回から採用。
勿論楽曲はルトゥールさんに提供してもらった『災害』である。
イントロからテンション爆上がり。
自然と身体が高揚してくる。そしてその熱は観客にまで伝染する。
「うおーっ!!」
「拳聖ー!!」
「今日もド派手なKOを期待してるぞー!!」
ゴリゴリとモチベーションを上げつつ、観客席を見渡す。後楽園とは違って観客がいっぱいだ。
クラスメイトの姿も見える。俺の救世主のチンピラもこっちに手を振ってくれてるな。結構良い席で、それなりにお値段がするんだが。
クラスメイト達はしっかり購入してくれた。せっかく来てくれるし、俺からのプレゼントで良かったんだけどね。
俺はクラスメイトに手を上げて声援に応えつつリングイン。あ、期間限定四銃士と孤南君みっけ。
なんかあれだな。周りが良く見える。前回程絶好調じゃないと思ってたけど、俺の思い違いなのかね? リングに上がると一気に落ち着いてきたというか、覚醒してきたというか。
「なるほど。俺は主人公だったのかもしれん」
「何を馬鹿な事を言ってんだ」
父さんと軽く話しつつ、チャンピオンの入場を待つ。マイク選手は日本人扱いとして、海外の人と戦うのは初めて。この入場曲はなんじゃろな。
全然知らないけど、入場曲は俺の勝ちだな。
「筋肉の鎧すげぇ」
「あれでスピードもそこそこあるからな。中々苦労するかもしれないぞ」
リングに上がってきたチャンピオンのヘムサポ選手の身体がすげぇ。昨日の計量の時に見た身体より一回り大きく感じる。向こうもリカバリーはばっちりらしい。
まぁ、俺よりキャリアはかなり上なんだ。失敗なんて滅多にしないわな。
チャンピオンは四方にお辞儀をして、最後はこっちに向かってペコリと。
俺も釣られてペコリと。
「やっぱり礼儀正しいのが一番だよね。マイク選手がおかしかったんだ」
「あれはお前が煽ったせいでもあるだろ」
知らないね。都合が悪い事は忘れる事にしてるんだ。ほら、俺って馬鹿だから。記憶力が悪いのよ。
褒められたりした事は忘れずに覚えてるんだけど。
「両者中央へ!!」
レフリーに促されてリング中央へ。
改めてヘムサポ選手と向かい合ってみると、俺の方がリーチは上ってのが良く分かるな。
ジャブの差し合いでは負けられん。東南アジアの選手は特にタフだって言うし。これは長丁場の試合も覚悟しておくべきか。
審判が注意事項を伝え終わって、最後にヘムサポ選手とグローブを合わせる。
お互いの健闘を祈りましょう。
「ペース配分に気を付けろよ。仕掛けるタイミングを間違うな。後、しつこいようだが…」
「自分を見失うなでしょ? 分かってますとも。俺も今日は長丁場を覚悟してるしね」
「よし。頑張ってこい」
俺って良く考えたらまだ3Rまでしか戦った事ないんだよね。デビュー戦の小園選手を相手に。
夜木屋選手は2Rだし、前回のマイク選手は1R。
フルラウンド戦える身体は作ってるつもりだけど、実際試合でやった事ないから、そこがどう影響してくるか。序盤から飛ばし過ぎも良くないね。
まずはジャブで自分のリズム、ペースに引き摺り込もう。
俺は頭の中で試合プランを組み立てつつ、ゴングを待つ。
「カーン!!」
そしてOPBFタイトルマッチのゴングが鳴った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます