第53話 セミファイナル
翌朝。今日もうどんを食べる。
相変わらず美味い。これ、本当に合法のモノしか使ってないんだよね? マジでこれを食べるとやる気が全然違うんよ。合法麻薬ってやつですか。
「リカバリーは人によってそれぞれだからな。時間を置いてひたすら食べ続ける奴もいれば、そこまで食べない奴もいる。平気で翌日に5kgとか戻してくる奴もいるからなぁ」
うどんをしこたま食べて満腹で満足してると、父さんがリカバリーについて教えてくれる。
きっちりいつもみたいに三食食べる人とか、2.3時間置きに消化に良いモノを食べる人とか。
おかゆとかね。後はサプリメントを摂取する人もいるみたいだね。
「俺は美春のうどんとうなぎを食べてたりしてたが…」
「うなぎ苦手なんだよね…」
俺はそんなにガツガツ食べない派。
減量がめちゃくちゃキツい訳でもないし。
昨日と同じようにうどんを食べれたら満足。
あと、肉ね。がっつりは食べないけど、肉は食べたい。カツが入る感じがするから。
だから俺のうどんは釜玉うどんに豚しゃぶがついてる。これがまた美味いんだ。
うどんのタレと良い感じに混ざり合って最高です。
父さんはウナギも食べるみたいだけど、俺は苦手なんだよね。何故かは分からん。
あんまり美味しいと思えないんだ。我ながら勿体無いなぁとは思ってます。
「ねむたっ。ちょっと寝るね。会場行く時になったら起こして」
「緊張感皆無か」
朝起きて、うどんをしこたま食べると眠くなってきた。試合は夜からだしまだ時間はある。
仮眠をとって、もっかいうどんを食べてから会場入りかな。
「メガシャキ! テンションマーックス!!」
二度寝からの起床。
体も減量前とは比べ物にならないぐらいキレキレ。やっぱり母さん特製のうどんにはやばいモノが入ってるに違いない。
起きてからまたうどんを食べる。
飽きないのかって? 全く飽きません。
わんこ感覚でどんどん食べれちゃう。
「体重64kgぐらいか。リカバリーも問題なさそうだな」
「うん。相手もそれぐらい戻してくるだろうけど」
多分向こうはそんなに減量苦労してないだろうけどね。体の仕上がり具合的に。昨日の時点でかなりキレキレだったし。
「よし。うんこいこう」
これ大事なのよ。
しっかり消化出来てる証拠って事ね。
「大晦日なのに人が結構来てくれてるなぁ」
「今日は世界タイトル戦もあるからな」
そうなのである。
俺ちゃんは今回前座のセミファイナルを務めます。日本人のバンタム級の世界チャンピオンが防衛戦をメインゆえに。
さっきその人に挨拶もしてきた。
滅茶苦茶紳士的な人で、前座扱いして申し訳ないとしきりに頭を下げられた。どうやら父さんの大ファンらしい。親の威光って凄いね。
母さんの権力と父さんの人気。俺って結構お坊ちゃんですな。
「世界戦を盛り上げる為にもしょっぱい試合は出来ないね」
「いつも通りを心掛けろよ。観客は前回みたいな圧倒的KOを求めてるかもしれないが、自分のリズムを崩してまでやる事じゃないからな」
控え室で父さんとミット打ちを軽くしながら体のの感触を確かめつつ話をする。
前回の試合の時みたいな万能感はない。けど、調子が悪い訳でもないからなんとも言えないな。
あの時はなんかパンチとか当たる気がしないって感じだったんだけど。
「その感覚を追い求めすぎるなよ。変にそれを意識し過ぎると自分を見失うぞ」
「いえっさー」
確かにその通りだな。
普通にやろう、普通に。
どう頑張ったって、練習以上の事は出来ん。
突然覚醒する主人公じゃあるまいし。これまでやって来た事をしっかりと思い出して、試合に挑むとしようか。
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