第52話 リカバリー


 へいへーい!

 やって来ました横浜アリーナ!

 明日はここで試合するんだぜー!

 今日は前日計量にやって来たんだぜー!

 ちょっとテンションがおかしいのは気にしないで欲しいんだぜー!

 寝起きは絶好調だったんだけど、計量まで水分が取れないから喉がカラカラ!

 無理矢理テンションを上げて、忘れようと頑張ってるんだぜー!!


 で、横浜アリーナに来たものの、実際に計量するのはその近くのホテル。

 さっさと終わらせて水を口に含みたい。カラカラすぎて気持ち悪いんだよね。



 「皇選手。61.19kg。計量OKです」


 パンツ一丁で計量をパス。

 ホテルの広い部屋で、既に記者とかも入っていたので、ポージングをしつつ、パシャパシャと写真を撮ってもらう。


 そして次はチャンピオン。

 フィリピンのヘムサポ選手。

 もう少し発音しやすい名前にして欲しかった。

 相手の名前にケチをつけるわけにはいかないから、心の中で思うだけにしておくが。


 「ヘムサポ選手。リミット一杯。計量OKです」


 うーん。流石チャンピオン。そんなに準備期間があった訳じゃないのに、しっかりと体を作ってきてらっしゃる。背中とか凄いよ。俺より小さい分、筋肉があるんだよなぁ。


 そしてそのまま記者会見。

 前回はマイク選手と口撃しあったけど、今回はそんな事もなく。

 格闘選手の試合前会見にしては穏便に終わったんじゃないかな。

 チャンピオンの試合を受けた理由にお金が良かったって正直に言ってて笑っちゃったけど。

 やっぱり今回のファイトマネーはOPBFじゃ破格なんだろうなぁ。


 そして最後に二人で写真を撮って握手して終了。

 これこれ。こういうので良いんだよ。試合前からバチバチとやり合っても疲れるだけでしょ。

 今度からもこんな感じだったら楽でいいのにな。




 「一気に飲むなよ。少しずつだ」


 「分かってらぁ」


 記者会見が終わってようやくリカバリー。

 会見前に一口水を飲んだけど、余計に喉が渇いた。

 まずは父さんが用意してくれていたキンキンに冷やしたOS-1。

 冷やしてるのはその方が吸収が早いかららしい。

 俺にはあんまり違いが分からないけど。


 「キンキンに冷えてやがるっ…!」


 とりあえずこのセリフを言えるから良いかなと。

 これを急いで喉を潤したい気持ちをグッと堪えてゆっくりと飲む。一気に飲むとあんまり吸収してくれないし。


 「うっま。減量明けに飲むOS-1ってなんでこんなに美味いんだろ。普通の時に飲んでもくそ不味いのに」


 OS-1。経口補水液である。

 脱水症状の時とかに飲むやつだな。

 まぁ、塩水だし美味しくないのは当たり前なんだが、減量明けは美味いんだ。色々不足してるからね。がぶ飲みしないようにちびちびと。

 30分くらいかけてゆっくりと飲み干す。


 「あー生き返った!」


 早く帰ってうどんを食べたい。

 あれの為に減量を頑張ったと言っても過言ではない。今から想像しただけで涎がとまらん。


 「ほい。ウイダー」


 「どもども」


 減量が終わってからの本格的なリカバリーは今回が初めてだ。今まではあんまり意識しなくても体重をセーブ出来てたし。

 この辺のノウハウはないので、父さんにお任せ。

 いずれは自分なりのリカバリー方法が出来上がるんだろうが、俺はとにかくまだまだ経験がないので。


 こういう時に元プロの父さんが居てくれて助かるなぁ。ほんとに。

 リカバリーとか絶対苦労するはずなのにね。

 父さんに頼ってばっかりじゃなくて、自分でもしっかり調べたりしてみないとな。

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