第50話 クリスマスプレゼント


 クリスマス。

 残念ながら一緒に過ごすような彼女がいないので、いつもと同じ様にジムでトレーニングだ。

 しかし、良い子にしてたからだろうか。

 サンタさんがプレゼントをくれた。


 「拳聖ちゃーん。ルトゥールから例のモノが届いてるわよー」


 「きたーっ!!!」


 家に帰ると、母さんが待望の知らせを教えてくれた。今年の夏に約束した、日本チャンピオンになったら楽曲を提供してくれるという約束。

 それを本当に守ってくれたらしい。


 俺は急いで包みを開ける。

 そこには『災害』とでかでかと書かれたCDが入っていた。


 「ふむ? 災害とな? 人聞きの悪い」


 いや、ボクシング選手の異名ってそんなもんか?

 『モンスター』とかもあるもんね。

 俺も将来なにかしらの異名とかつけてもらえるのかな。楽しみ。


 とりあえず早速聞いてみよう。

 一言コメントに俺の試合前日の12月30日に動画サイトにもアップするって書いてあった。

 これ、登場曲にしたいんだけど、これは誰に頼めば良いのかな? 後で父さんに聞いておこう。



 「〜〜〜♪」


 おおおおお。なんだこれ。なんだこれ。

 聞いてるだけで力が漲ってくるぞ。

 力強さというか、爆発力というか。

 なんだこれ。なんだこれ。なんだこれ。


 ちょっと俺の脆弱な語彙力じゃ、この音楽の凄さは表現しきれない。

 でもあれだ。これを試合前に聞いて負ける気はしないね。


 「ん? 相手も聞くから一緒か」


 登場曲にしたら相手も聞くもんね。

 相手もノリノリな感じになっちゃったらどうしよう。


 「味方には活力を。相手には絶望を。そんな感じで都合良くなってくんないかな」


 いや、俺がそうする。この曲を聞いただけで試合を諦めるような。

 災害と言えば皇拳聖。そう呼ばれるように頑張ろう。


 「拳聖ちゃーん。私達からもクリスマスプレゼントがあるわよー」


 「おおおー!!」


 これは母さんと父さんから。

 試合前に着るガウンというか、パーカーというか。これを着て入場してねって事だな。

 ちゃんとスポンサーの神宮寺グループが入ってて、滅茶苦茶カッコいいパーカーになってる。


 「世界戦になると、自分の名前が入った服とかタオルとかも発売されるぞ」


 「父さんも自分のブランドみたいなのがあるよね」


 俺も早くそうなりたい。拳聖ブランドが欲しい。


 「うーん。俺は幸せ者だなぁ」


 高校生になってもサンタさんが来るんだぜ。

 しかもプレゼントはこの世に二つとない一点モノときた。ルトゥールさんがわざわざ自分達から楽曲提供するなんて今まで無かった事らしいし。

 気合いも入るってもんよ。


 両親からもこんなカッコいいパーカーを頂いちゃって。貰ってばかりで申し訳なくなるね。


 「試合まで1週間切ったか。ラストスパートだな」


 残念ながらバリバリの減量中って事で、クリスマスのご馳走とか、ケーキは食べれないんだけど。

 聖歌は滅茶苦茶美味しそうに食べてた。羨ましい。父さんは俺に気を使ってたけどね。同じボクシング選手だから気持ちが分かるんだろう。


 俺はあんまり気にしないけど。

 羨ましいなーとは思うが、イライラしたりはしないね。漫画みたいなキツい減量じゃないからかな。


 大晦日の試合に勝って、正月は美味しいモノをたらふく食べたいね。


 

 

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