第44話 次戦の相手


 「初めまして、拳聖君。これから君の代理人をやらせてもらう白鳥です。これからよろしくね」



 代理人さんとの初対面。

 ピシッとしたスーツでやってきたイケメン青年さん。それはもう仕事出来そうな人でびっくりである。私、失敗しないのでとか言いそう。

 あ、あれ女の人だっけ。


 「いやーこんな有望株の代理人をさせてもらえるなんて嬉しいなぁ」


 今日代理人さんが家に来るってなって、とりあえず一人で会うのは不安だから母さんに同席してもらったんだけど。難しい話は俺馬鹿だから分からないしさ。


 とにかく話しやすい人だ。

 雑談しつつ、俺の自尊心をくすぐりながら色々な話をしてくれたもんだから、気付いたら1時間ぐらい経っていた。


 話も面白かったし。白鳥さんは他にも色んなスポーツ選手の代理人をしているらしく、中には毎年の様にスポーツ長者番付に載ってる人も居て驚いた。

 今度サインを貰って来てくれるらしい。やったね。俺もいつかそこに載りたいなぁ。ボクシングでは難しいのかね。


 「思ったよりも話が弾んじゃったね。そろそろ本題に入ろうか」


 弾ませてくれたのは白鳥さんなんだが。

 こういう自然な話が出来る人が代理人とかに向いてるんだろうか。

 まぁ、それはさておき。


 「次の試合の事ですか?」


 「うん。次はOPBFのタイトル戦って事で良いのかな? 一応日本チャンピオンになったし、防衛戦をするって手もあるけど」


 あーなるほど。チャンピオンになったし、一回ぐらいは防衛戦をしとくべきなのか?


 「挑戦者いますかね?」


 「そこだよね。この前の試合が圧倒的過ぎたから…。早く返上して世界に行ってくれって思ってるんじゃないかな」


 「じゃあOPBFが良いです」


 階級的にも。ここら辺はどんどん上げていかないと、マジで減量がキツくなる。

 将来的にはもっと上の階級で4団体制覇とかもしたいけどね。ライト級でそんなんしてたら、間違いなく苦労するし。


 「分かったよ。早速この後先方にアポを取ってみよう。向こう次第だけど、遅くても年明けには挑みたいところだね」


 「はい。高校生のうちにライト級からは卒業してたいですね。理想はスーパーライト級からも抜け出してたいですけど」


 「なるほどね。それは僕も頭に入れとくよ」


 その後もこれからの話をして今日は解散。

 次戦の相手が決まり次第連絡するとのこと。


 「あー早く試合したいなー」


 「拳聖ちゃん? その前にこのテスト結果について話を聞きたいのだけど」


 「ぎくぅ」


 次の試合に思いを馳せてると、母さんがこの前の定期テストの結果をピラピラと見せながら、怖い顔をしてこちらを見ていた。

 怖い顔してても綺麗ですね。なんて言って誤魔化せないだろうか。


 「えーっと…」


 「赤点はダメよ赤点は。ボクシングと勉強を両立するのが約束だったはずよ? それが守れないなら、高校卒業するまでボクシングは没収よ?」


 没収って。そんなゲームみたいに…。

 いやいや。赤点取った俺が悪いんだ。

 大人しく説教を受けよう。


 「次赤点取ったら没収しますからね」


 「はい…」


 くぅ。前世では高校卒業したし、赤点も取った事無かったんだが。

 まぁ、前世は今の高校より遥かに偏差値が低いところだったからだろうが。


 次のテストは気合いを入れて頑張らねば。

 みんなに手助けしてもらおう。数学がどうしても好きになれないんじゃ…。

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