第41話 反響
「拳聖! 昨日は凄かったな!」
「ありがとう」
「次はOPBFなのか? 頑張れよ!! 次の試合も応援に行くぞ!」
「ありがとう」
月曜日。俺はぴちぴちの高校生なのできちんと学校に向かう。ダメージがあったりしたら病院に行って検査を受けたりして、学校どころじゃないかもしれないけどね。昨日に関してはノーダメージ。
掠りすらもしてない。という事で、元気に登校させてもらった訳なんだが。
それはもう凄い反響だ。なんだかスターになった気分。まだ日本チャンピオンなんだけどね。世界チャンピオンになったらどうなるんだろうか。
「拳聖、サイン欲しいって奴が結構居るんだが」
「勿論書くよ」
みんなわざわざ試合観に来てくれたんだ。
サインを書くぐらいどうってことないね。
結局今日は一日中サインを書いてた。
これがスターになるって事か…。素晴らしい。
でもちょっと疲れたな。楽しかったけど。
「おおー。チャンピオンベルトだ」
学校帰りにジムに寄る。オフなんだけどね。
昨日はベルトを家に持って帰らずに、ジムに預けてたから、なんだか気になって見に来たんだ。
「他人事やなぁ。お前のモンやぞ?」
「なんか実感湧かないっすね。昨日も家に帰ってすぐに寝ちゃいましたし。学校でチヤホヤされて少しずつって感じです」
ベルトを巻いた瞬間は嬉しかった。
でもやっぱり俺が欲しいのはこのベルトじゃないや。世界チャンピオンのベルトが欲しい。
「あー練習したくなってきた」
「アホぬかせ。今日から一週間はオフや」
えー。マジでダメージ皆無なんだけどなぁ。
なんか落ち着かない。ってか、今すぐ試合がしたい。次の試合はいつかしらん?
「ボンは代理人つけたんやろ? うちも協力するけどな。向こう次第やわなぁ」
現在九月中盤。年内にOPBFのベルトまで狙いたいんだけど、流石に無理かな?
あ、代理人で思い出した。明後日その代理人さんと会うんだ。
正式契約は日本チャンピオンになってからって事になってたからね。これから俺好みのマッチングのためにビシバシも働いてもらおう。
伯父さんが言うにはかなり有能な人みたいだしね。期待させてもらいますよって。
「ふんふんふふーん♪」
「あ、あの!」
「む?」
ジムからの帰り道。
鼻歌を歌いながらご機嫌に歩いてると、一人の男の子に声を掛けられた。
見た感じ中学生っぽい。分からん。小さめの高校生かも。
「皇拳聖さんですよね?」
「あ、はい」
突然の事でびっくりする俺ちゃん。
まさか道端でも声を掛けられるとは。
まぁ、地上波でも試合やった事だし、見てくれる人は結構居たって事なのかな? ファンが増えて嬉しいです。そんな事を思ってだんだけど…。
「今からボクシング始めても強くなれますか!」
「ほう?」
なるほどなるほど。ボクサー志望って事ね?
強くてなれるかどうかは才能次第だけど。身も蓋もない事言っちゃうとね。
俺は特典っていうズルがあるし、赤ちゃんの頃から記憶があったのを良い事に、『コーディネーション』能力を鍛えまくってたから今がある。
あれは12歳ぐらいまでが伸びのピークらしいからね。俺は特典があるからまだまだ伸びると思って練習は続けてるけどさ。
「昨日の皇選手の試合を見て一気にファンになりました!! 今ジムに行こうとしてた所なんです!!」
「よーし! 俺に着いてこい!!」
そこまで言われちゃ俺も黙ってられませんぜ。
才能が無くても努力である程度のところまでは登り詰めれるんだ。
とりあえず体験だけでもしてもらおうじゃない。
俺はそう思って少年と一緒にジムに逆戻りした。
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