第39話 VSライト級マイク・大村2
『皇選手! ゴング開始と同時に凄いスピードでチャンピオンに近付いた!!』
俺の今までにない立ち上がりに、マイク選手は面を食らったような表情をしている。
まぁ、今まではジャブで串刺しにしてからのカウンターが俺のスタイルだったからな。
それでも、俺はまだプロ三戦目。プレースタイルを決めつけるのは時期尚早ってもんよ。
一瞬慌てたマイク選手だったが、すぐに気を取り直して応戦。
俺を近付けないようにジャブを放ってくる。
が、俺はそれを紙一重で躱してボディに一発。
苦悶の表情を浮かべたマイク選手だったが、堪えて必殺技の右フックを繰り出す。
俺はそれも躱して更にボディ。
躱してボディ。躱してボディ。とにかくボディ。
『うわぁ!! 皇選手! 相手のパンチを的確に躱してボディ! ボディ! ボディ! 凄まじい連打だ!!』
くははははは!! たまらんな!!
マジで相手のパンチが良く見える!! これならやりたい放題だぞ!!
ボディを打った時の肉を削ぎ落とすような感覚がたまらん。これは癖になりそう。
「ウグッ!」
マイク選手はたまらずガードを下げる。
顔面はガラ空き。これを狙えばあっさりとダウンを奪えそうだ。
しかし。しかしである。
『マイク選手! たまらずガードを下げた! が! 皇選手お構い無し!! 顔面には目をくれず、執拗にボディを狙っていきます!!』
早々楽になんてしてやるかってんだ。
俺のファーストキスは国宝級になる予定なんだぞ? それを危うく奪いかけやがってからに。
母さんみたいな、ルトゥールの梓さんみたいな美人な彼女が出来た時に大事に取ってるってのによ。
「ガァッ!」
苦し紛れにパンチを振り回してくるマイク選手。
俺はラッキーパンチには充分気を付けて、しっかりと見切って躱す。そしてボディ。これを繰り返しているとその中の一つがカウンターで思いっ切りレバーに突き刺さった。
『ダウーン!! 皇選手! 1R開始から嵐の様な猛ラッシュ!! 地獄のボディ攻めにマイク選手がたまらず倒れた!!』
「ワン! ツー! スリー!」
俺はニュートラルコーナーでマイク選手を見下ろす。チラッと時間を見てみるが、まだ開始して1分少々。俺は余力たっぷりである。
「フォー! ファイブ! シックス!」
マイク選手はまだ座ったままだが、カウントギリギリには立ってきそうだ。
顔はかなり苦しそう。なんかその表情を見てるとやる気が漲ってくるのはなんでだろう。
俺ってもしかして変態なのかな。
「セブン! エイト!」
8カウントでマイク選手は立ち上がる。
まぁ、腹を殴られただけだし意識はしっかりしてるでしょうよ。吐き気は半端ないかもしれんが。
『皇選手! 笑ってます!! これで終わるのは物足りない!! もっと戦わせろ! そんな表情でしょうか!!』
マイク選手が立ってくれて嬉しくて思わず笑顔が出てしまった。流石にまだまだ不完全燃焼。
もっともっと付き合ってもらわねば。
「ファイト!!」
レフリーの合図に俺はまたも突っ込む。
マイク選手はジリジリと下がってるが、逃がす訳がない。戦意喪失とかやめてくれよ?
試合は始まったばかりなんだ。
「むっ」
マイク選手は亀のようにガードを固めてしまった。このRはとにかく耐えてダメージを回復しようって魂胆だろうか。
「させるかっての」
俺はここにきて今日の試合初めてのジャブを繰り出す。俺のフリッカージャブはガード越しでも、ヘッドギア越しでも顔を腫らす事が出来るのは、これまでの経験で分かっている。
どうせなら両方の目を見えなくしてやろうか。
そんな事を思いながら俺は、今までの試合より更に速く、回転率を上げたジャブを放った。
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