第32話 出会い
合宿最終日。
明日は東京に帰るだけなので、今日は最後の追い込みだ。いつもの様に早朝の日が昇る前に起きて、砂浜ダッシュ。
『超回復』のお陰で筋肉痛すらもすぐに回復して、俺の体はどんどん強靭になっていくのだが、そうなったら更に追い込むので、きついのには変わりない。
「あーきっつい」
「ほら。しんどい時こそトレーニングだ。シャドー始めろ」
相変わらず父さんは厳しい。
しっかりしごいてくれるのはありがたい限りなんだけどね。内心で恨み節を連呼してしまうのは仕方ないだろう。
朝練が終わり、朝食を食べて仮眠。
お昼はしっかり聖歌と海で遊ぶ。
毎日貸切状態のプライベートビーチみたいな感じだったのだが、今日は一組の男女が居た。
「海だー!!」
「見たら分かるわよ」
俺が初日にやって事と同じ事をしてる男性。
それをクールに切って捨てる女性。
「およ? どうもー」
「こんにちは」
「どうも…。って、え!?」
男の人が俺に気付いたみたいで、こちらに軽く挨拶して女性の方も同じく。
俺もとりあえず挨拶をしてそこ顔を見て驚いた。
この世にこんな人間が居るのかと思う程の美男美女。それはまぁ良い。二人ともサングラスはしてるが、ほぼ毎日の様に動画を見てるんだから、間違う訳がない。
「ルトゥール!?」
「おお。俺達も有名人になったな」
思わず大声で聞いてしまう。
男の方は嬉しそうに笑いながら有名になったとか言ってるが、そんなもんじゃない。
ただの動画配信者だと本人達は言ってるが、世界的アーティストとして有名だし、チャンネル登録者なんてギネス記録に載ってるはずだ。
時折動画で世界を揺るがすような事して、世間を騒がせている。
「それにしてもお兄さん凄い身体してますね」
男の方は俺の体を見てまじまじと見て呟く。
自信のある体を褒められて嬉しいのだが、正直俺はそれどころじゃない。
大ファンだし、試合前には音楽を聴いて心を落ち着かせたり、テンションを上げたりしてるのだ。
それが目の前にいる。
狼狽えてしまっても仕方ないだろう。
「ル、ルトゥールのお二人はどうしてここに?」
「この前この近くに別荘を買ったんだよね」
「せっかく買ったから遊びに来たの」
な、なんたる偶然。
俺は心の底からこの別荘を持ってる父さんに感謝した。別荘とはいえルトゥールとご近所さん。
控えめにいって最高です。
「拳聖ー? どうしたー?」
俺は内心で父さんに感謝の念を送ってると、その父さんがやってきた。
「あ、拳士君だ」
「あら、ほんとね? 美春ちゃんもいるのかしら?」
「圭太と梓じゃないか。久々だな」
「と、と、父さん!? 知り合いなの!?」
「ん? ああ。俺がというより、美春の方が関わりは大きいだろうが」
おいおい。さっきの感謝は取り消すぞ?
俺がルトゥールの大ファンだと知ってて、今まで知り合いだってのを黙ってたのか?
なんて殺生な事をなさるのか。一度くらい会わせてくれても良かったじゃん! 俺は親のコネを使う事になんの躊躇も覚えませんよ!
「拳士君の息子さん? って事はボクサーなんだ? だからそんな凄い体してるんだねぇ」
ほえーっと気の抜けた声を出して、相変わらず俺の体をまじまじとみる圭太さん。
好きなだけ見ていいからサインくれないかな。
梓さんの方は母さんとキャッキャと話している。どういう知り合いなんだろうか? 芸能界関連かな? ルトゥールの二人は偶にテレビに出てるし。母さんと共演してなかったと思うんだけど。
この二人はテレビ嫌いなのか、オファーを出しても滅多に了承してくれないって聞いた事があるしさ。
そんな事をボケーっと現実感がないまま思ってると、父さんが親バカを炸裂させて息子自慢を始めた。
「こいつは俺以上の選手になるぞ!」
「へぇー! そんなに凄い選手なんだ。え? まだ高校生なの? すっげぇな」
タブレットで俺の試合映像を見せている。
中々に恥ずかしい。大ファンの人に自分の試合を見られるのはこんなに恥ずかしいのか。
「うん。うん。ちょっと待ってね」
試合映像を見た圭太さんは何かに納得しながら、梓さんの方へ走って行った。
はて? 何があったんだろうか。
「それよりも父さん!! ルトゥールと知り合いなら言ってくれよ!」
「すまんすまん。お前が良く動画やら音楽を聴いてたのは知ってたが、そこまで熱心なファンとは思ってなかったんだ」
なんだ。俺が大ファンって知らなかったのか。
なら仕方ない。ここで会えたんだから良しとしよう。やはり父さんに感謝。両親が有名人でお金持ちって素晴らしい。嫌な人間にならないように気を付けよう。
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こっちの作品に別作品の人物が出てますが、あっちの作品には登場しませんw
あっちはなるべく現実に沿った事象で書いてるので、色々おかしくなりそうなんでw
まぁ、ならこっちに出すなよって話なんですけども。一回こういうのをやってみたかったんや。
許しておくんななまし。
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