第23話 スポンサー
「やぁ! 拳聖君! 久しぶりだね!」
「ご無沙汰してます!」
以前も説明したが、伯父さんは神宮寺グループを実質的に差配してる、経済界の重鎮中の重鎮だ。
大体の人間は家柄マウントを取ってきても、神宮寺の名前を聞けば黙る。
その影響力は日本だけに留まらず、世界的に有名なのだ。
なんで母さんと父さんは結婚出来たのやら。
因みに父さんの両親普通の一般階級の人で既に亡くなっている。父さんが高校生の時に交通事故で。
そこで少し荒れてた時期に父さんを拾い上げて、世界チャンピオンまで押し上げたのが会長だ。
関西弁で言うて言うてーとかやかましくしてるだけの人ではないのだ。
それはさておき。
「昨日の試合は凄かったね! 残念ながら現地で見る事は出来なかったけど、録画でちゃんとチェックしたよ」
「ありがとうございます」
満面の笑みで褒めてくれる伯父さん。
こうして見ると、普通に良い感じのダンディな人にしか見えないんだけど。
界隈では経済界の魔王やら、笑顔で相手を地獄に突き落とすド畜生なんて言われてる。
とてもそうは見えないんだけどね。
「さてさて。忙しいから早速本題に入らせてもらうね。今日来たのは、察してると思うけどスポンサーの打診だ」
「って事は支援してくれるって事ですか?」
「うんうん。元からその気だったんだよ? 正直支援は必要ないかなとも思うけど、お金はいくらあっても困らないしね」
いやぁ。お父さんがうるさくって。なんて言いながら鞄から書類を取り出す伯父さん。
昨日負けたり、苦戦してたらこの話は無かったんだろうなぁーと思いつつ、渡された資料を読む。
まぁ、プロなんて結果を出してなんぼの世界だし、当たり前の事だよね。
正直俺は環境が恵まれすぎてるし。
「母さん」
サラサラっと資料を読んでみたけど、いまいち分からぬ。難しい言葉がいっぱいだ。
こういう事は母さんに任せるに限る。
なにせ神宮寺の人間なのだ。今は女優として活躍しているが、母さんは滅茶苦茶頭が良い。
将来は伯父さんの補佐をする予定だった程には。
結果的に女優として成功して、会社の広告塔になってるらしいが。
俺もせっかく支援してもらえるなら、ちゃんと広告塔になれる様に頑張りたいな。
まぁ、前人未到の9階級制覇なんてしたら、間違いなくすんごい広告塔になるだろう。
精進せねばなるまいな。
「簡単に言えば、年間を通してスポンサーになるか、試合毎にスポンサー契約をするかって事ね」
母さんが一通り資料を読んで、馬鹿な俺に分かるように非常に簡潔に説明してくれた。
「どっちの方が良いの? イマイチ分からん」
まぁ、簡潔に説明されても分からんのだが。
無知って怖いね。それでも勉強する気が起きないのが俺の馬鹿なところなんだが。
将来結婚する時は、母さんみたいな美人に加えて賢い人も追加しよう。
………一気にハードルが上がったなぁ。俺ちゃん結婚出来るのかしらん。
ってか、母さんが理想の人過ぎて勝手にハードルが上がっていくんだよね。マザコンなのかな。
「大差ないわよ。試合毎の契約の方が、勝ち続ければ値段を釣り上げたり出来るけど。年間契約は安定した稼ぎが期待出来たり」
「年間契約の方が伯父さんはお得じゃん」
なんか聞く限り、試合毎のワンショット契約? には伯父さんにメリットが無いように思えたんだけど。
「それは違うよ、拳聖君。年間契約は君が負けたら損だしね」
そう思ってたら伯父さんが教えてくれた。
確かにそうだな。俺は自分が負ける事を全く想定してなかったや。傲慢がすぎるってもんよ。
「じゃあ試合毎の契約でお願いします。負ける気は無いですし、将来的にはそっちの方がお得みたいなので」
「ふふっ。豪胆だね。じゃあ詳しい話をしていこうか」
そこからは難しい話のオンパレード。
分かったのは将来的には凄い単位のお金が動きそうだなぁって事ぐらい。
だって次の試合の契約ですら、前世の俺では考えられないような単位なのだ。まだ次でプロ二戦目だよ? これで勝ち続けてしまったら、将来どうなるんだろう。楽しみになってきたな。
「拳聖君は代理人を付けた方がいいかもしれないね」
「代理人ですか?」
はてはて? もう難しいお話はお腹いっぱいなのですが?
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