第24話 代理人


 「拳聖君の所属してるジム、天下ジムは拳士君が世界チャンピオンになったお陰で、それなりにボクシング業界では有名だ。この調子でもスーパーウェルター級までは、天下ジムの知名度でなんとかなると思う」


 なんか伯父さんからボクシング用語がバンバン出てくるのが新鮮だな。

 これは父さんと母さんが結婚する時に一通り勉強したかららしいけど、伯父さんは今ではかなり詳しいみたいなんだよね。


 「でも日本人、いやアジア圏の人間は中重量級でほとんど結果を残せていない。過去にはミドル級で世界チャンピオンになった人も居るのにね。だから、その階級までになってくると、かなりマッチングで苦労すると思うんだ」


 ほほう。なるほどなるほど。

 確かにそうだな。その辺の階級では舐められまくってるからな。俺が9階級制覇をして黙らせようと思ってる訳だが。ヘビー級なんてバケモノの集まりらしいけど。


 「そこで早い事代理人を付けておいたらどうかなと思ったんだ。僕の知り合いにそっち方面を得意にしてる人が居てね。君の試合を見せたら是非にと言ってくれたんだよ」


 なんて根回しの良さ。

 まだ1試合しかしてないのに、そんな凄腕そうな人がついてくれる訳がない。

 これも神宮寺ぱぅわーなのだろうか。俺は伯父さんが怖くて仕方ないぜ。


 「でもお高いんでしょう?」


 「ファイトマネーの5%だね」


 それはどうなんだろうか?

 俺の前回の試合は15万ぐらいだったんだが。

 一万円も入らない計算になっちゃうよ?


 「甘い。甘いよ。拳聖君。かの有名なボクシング選手が1試合で200億円以上稼いだのを知らないのかな? それの5%と考えてご覧よ」


 えっと。ちょっとスマホ出してもよろしい?

 馬鹿だから暗算出来ませんで。


 「10億さ。どうだい。凄いだろう?」


 俺がスマホを取り出そうとしたら伯父さんが先に答えを教えてくれた。

 ぎょえー。10億。

 そう考えると5%も馬鹿に出来ん。


 「勿論、拳聖君がそこまで稼げる選手になるかは分からないけれど。でも9階級制覇を目指してるんだろう? もしそこまでいけるならこれ以上に稼げてもおかしくはないと思うな」


 ボ、ボクシングすげぇ。

 そんなに稼げるスポーツだったのか。

 野球やサッカーの方がウハウハだと思ってたぜ。

 いや、そこまで稼げる人は上澄み中の上澄み。

 一握りの選手だけなんだろうけどさ。

 夢はあるよね。


 「えっと、じゃあお願いします?」


 「大事な甥っ子の為さ! 任せておいてくれたまたえよ!」


 伯父さんが俺に代理人を紹介するとお金でも入るんだろうなぁって思っちゃうよね。

 この人が善意でやってくれるとはあんまり思えない。いや、優しい人なのは間違いないんだけど。


 「あ、後はうちの系列の芸能事務所と契約して欲しいな。美春と同じ事務所だよ。有名になればメディア露出も増えるだろうし、そういうのをマネジメントする人も必要だろう?」


 「あ、はい」


 伯父さんから見ると俺は金の成る木なんだろう。

 俺はそういうのに疎いし、ここまで母さんが口を挟んでない事を見ると大丈夫なんだろうと思う。

 いや、そう思いたい。


 仕事の話は済んだとばかりに伯父さんは帰って行った。普通に忙しい人だしね。

 でも妹に大量のお土産は用意してたらしく、凄い量のプレゼントが部屋の一角を占めていた。

 妹は習い事で留守にしてるのを本当に、本当に残念そうにしていたな。

 伯父さんですら骨抜きにしてしまう聖歌。

 控えめに言って大天使ですな。


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 明日は掲示板。

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