第22話 試合後
試合に勝って気持ちよく余韻に浸りたいところだが、俺は普通に学校である。
高校卒業は母さんと約束したからな。試合の日以外はなるべく休まないようにしないと。
問題は勉強の方なんですがね…。前世で高校を卒業してるのに、成績は中の下。
馬鹿ですみません。
言い訳させてもらうと、前世よりもレベルの高い高校に通ってるってのもあるんだ。
その中で中の下。頑張ってる方だと思いたい。
「おはよー」
俺は教室に入って友達と適当に挨拶を交わす。
昨日試合って言ってないからな。相当興味がある人しか見てないだろう。だからいつも通り喋りながら授業の準備をしていると、友達の一人がニュースアプリを片手に俺に興奮気味に話かけてきた。
「拳聖! お前ニュース出てるぞ!」
「え?」
「なんだなんだ?」
「お前、とうとう警察のお世話に…」
たかだかボクシングの六回戦。
KO勝ちはしたものの、そんなのありふれた話だし話題にもならないだろうと思ってたんだけど。
父さんの息子だからだろう。
『皇二世! 鮮烈デビュー』なんて見出しで、スポーツ欄に小さくだけど載っていた。
ってか、誰だ? 警察のお世話に〜なんて言った奴は。俺は品行方正で通ってる。
成績は悪いけど、親に迷惑だけはかけないようにしていますぞ。
「うわっ! ほんとじゃん!」
「拳聖ってもうプロだったのか!?」
授業前だというのに、予想外にもワイワイガヤガヤとクラスメイト達が集まってきた。
「忙しくジムに通ってるのは知ってたけど、既にプロになってたとはな」
「言ってくれよー。応援に行ったのに」
おおお。
中々の人気っぷり。
これがプロという事ですか…。
素晴らしい。これからも頑張ろ。
「あははは。じゃあ次の試合が決まったら応援にきてね」
ふむふむ。次の試合はクラスメイトが応援に来てくれるかもしれない訳か。
これは気合いが入るな! 次の試合はいつだろうか? この流れのままやってやりたいところなんだが。
「次の試合は二ヶ月後や」
「思ったより早いっすね。助かりますけど」
「昨日の試合のダメージなんて殆どないやろ」
その日の放課後。
俺は学校帰りに直接ジムに行って、会長に鼻息荒く次の試合について聞いた。今日は試合明けって事で練習は休みなんだけどね。
すると、会長は既にマッチングの打診をしていたらしく、向こうからもOKを貰ったらしい。
「あれ? この人って…」
「ライト級日本ランキング1位。夜木屋。文句ない相手やろ?」
「最高っすね」
「こいつ倒してさっさと日本チャンプは取るで」
会長も粋な真似をしてくれる。
まさかプロ二戦目でこんな激熱なマッチングをしてくれるとは。
やる気が出ない訳がない。
「待て待て。お前、何練習しようとしてんねん。今日はオフやろが。体を休めるのもトレーニングのうちやぞ」
「ぐぅ」
いやはやその通りなんだけどね。
いてもたってもいられない気持ちになっちゃってさ。それに『超回復』さんのお陰なのか、マジで試合終わりとは思えないぐらい元気なんだ。
「今日は大人しく家に帰れ。それか学生らしく遊んでこい。不祥事だけは勘弁な」
しっしっとはよ出ていけと言わんばかりの会長にジムから追い出されて、仕方なく家に帰る。
うーん。体動かしたいなぁ。
そんな事を考えながら家に入ると、リビングに父さん母さんと伯父さんが居た。
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