第21話 VSライト級小園2
☆★☆★☆★
「はぁ。はぁ。はぁ。はぁ」
「仕留め切れなかったか」
「はぁ。はぁ。インファイトでも相手に負けてるとは思わなかったです。はぁ。はぁ」
小園陣営のトレーナーは大きく腫れ上がった左眼を見て歯噛みする。
第1Rが終わった時点で、小園の左眼は腫れていた。しっかりガードをしていたように見えたが、もらっていたのか、それともガード越しの衝撃でやられたのか。
とにかくそれを見たトレーナーは、長期戦は不利と判断して、小園に短期決戦で勝負を決めさせようと、第2R開始から猛スパートをかけさせた。
序盤は押しているように見えたが、相手の皇は地に足をつけてインファイトで応戦。
プロテストの映像を見た限りでは、トレーナーは典型的なアウトボクサーだと思っていた。
変則ジャブで相手を困惑させて、焦って突っ込んできたところをカウンター。
まだ高校生で、これがデビュー戦。
いくら、元世界チャンピオンの息子でも戦いの引き出しも多くないだろうと、小園には対戦が決まってから徹底的に対策をさせてきた。
「あれはやばいな。金の卵やぞ」
「はぁ。ふぅ。はい。やばいですよね。まさかインファイトで自分のパンチを見切られるとは思ってもいませんでした」
「目が良いんだろうな。フェイントはどうだ?」
息が整ってきた小園に問いかける。
目が良い選手はフェイントに引っ掛かりやすい。
なまじ目が良すぎると相手の行動全てに反応してしまって、引っ掛かってしまう事が多いのだ。
「ダメですね。全然誘いに乗ってくれません」
「親子二代でバケモンってか」
「とにかく、アウトボクシングでは勝ち目がありません。左眼もほとんど見えてませんし、ジャブを捌ける自信がないです。2R同様インファイトでなんとか活路を見出してきます」
その言葉と同時に審判からの声がかかる。
そして第3Rが始まった。
☆★☆★☆★
第3Rが始まった。
父さんからはこのRで仕留めてこいとのお達しがあったので、それを目標に頑張りたい。
小園選手は第2R同様、ゴングが鳴ると同時に突っ込んできた。
だが、俺ちゃんは成長する男。
さっきの二の舞にはなりませんぜ。
って事で1Rよりも更に回転率を上げたジャブで小園選手を近付けない。
相変わらずガードは固いが、1R目よりはマシだ。
「シッ!!」
なんとかインファイトに持ち込みたい小園選手。
それをさせない俺。第3R開始からジャブの滅多打ちだ。そしてとうとうガードが崩れ始める。
チャンスとばかりに俺は少し大振りの右ストレートを繰り出す。
そしてそれを隙とみた小園選手が右ストレートに合わせてカウンターを放ってきた。
が、それは俺の誘いである。
今まで堅固だったガードがかなりガラ空き。
俺は落ち着いてカウンターを躱して、左ボディを突き刺す。
「ガッッ!」
かなり手応えがあった。
てか、骨に触った感触があった。
そしてボディに悶絶した一瞬の隙。
俺は今度こそ右ストレートを顔面へ。
それはクリーンヒットしてダウンした。
「ワーン! ツー! スリー!」
俺は悠々とニュートラルコーナーに向かい、ダウンしてる小園選手を眺める。
多分最後の右ストレートは見えていない。腫れ上がった左眼のせいで死角になっていたはずだ。
「フォー! ファイブ! シックス!」
小園選手は未だに動かない。
俺は勝ちを確信した。
そして。
カンカンカンカーン!!
審判が大きく手を交差して試合終了。
俺は両手を上げてガッツポーズした。
「拳聖!!」
「うぇーい!!」
試合が終わって父さんがリングに入ってきたので、グータッチをする。
かなりホッとした表情をしている。そんなに心配だったんだろうか。
観客席を見ると母さんと聖歌が大喜びしてくれている。俺は大きく手を振ってお辞儀をした。
そして、四方向全ての観客席にお辞儀をし終わると、小園選手がこちらにやってきた。
「完敗です。ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました。滅茶苦茶楽しかったです」
本当に。
試合中は集中していたけど、終わってみると滅茶苦茶楽しかった。
これがプロの試合かって改めて実感したね。
父さんが立ってた晴れ舞台。
俺もようやくスタートラインに立てたかな。
3R1分15秒。
後楽園ホールにて。
皇拳聖。デビュー戦勝利。
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作者はボクシング知識、かなりにわかなんで間違ってる事があったら是非教えて下さい。
一応ルールを調べたり、ボクシング漫画を見たりして勉強はしてますがw
どこまでいってもにわかなのでw
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