第18話 対面
作者ポンドがイマイチよくわからんので、普通にkg表記でいかせてもらいます。
ライト級のリミットは61.23kgです。
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「皇選手。計量OKです」
試合当日。
計量の為に後楽園ホールでとうとう小園選手と対面した。向こうの顔はかなり真剣だ。
やはり見た目はアテにならん。不良みたいな見た目をして、体もかなり仕上げてきている。
あの体は適当な練習で作れるもんじゃない。
普段から弛まぬ努力をしてる証だろう。
俺は60.5kgでしっかり計量をパス。
この日の為に体重をちょこちょこ増やそうと思って頑張ったんだけどね。無駄な脂肪はつけたくないしと思って、流れに任せてたら微妙に足りなかった。
「小園選手。計量OKです」
ふむぅ。素晴らしい。
俺より身長が小さい分、筋肉の鎧に覆われてる感じだな。真面目な不良とはこれいかに。
小園選手は計量が終わってホッと安堵の表情で一息吐いていた。もしかしたら良い奴なのかもしれん。
「おっと、挨拶」
俺は新米のペーペーなので、自分から挨拶へ。
こういうのは大事だと思うんですよね。
試合前からトラッシュトークをかましてくる人もいるけどさ。
そういうのをしてくる相手は受けて立つけど、初めから喧嘩腰じゃなくてもいいじゃない。
俺ちゃんはそう思いますね。
「小園選手。今日はよろしくお願いします」
「押忍! よろしくお願いします!!」
声でかー。
この人は不良じゃなくて、体育会系で育った人なのかしらん? もう返事がそうとしか思えないんだよね。
「皇選手の噂はかねがね! お互い良い試合をしましょう!!」
「あ、はい。よろしくです」
気圧されてしまった。
勢いが凄いんだ。鬼教官と話してる感覚。
漫画の世界でしかしらないけど。
その後は、一旦家に帰って軽くご飯を食べる。
今日のご飯は勝負飯。
父さんが現役時代の試合前に母さんに作ってもらって食べていたものだ。
「うっひょー! 頂きます!!」
「召し上がれ」
メニューはシンプルな釜玉うどん。
これがかなり美味しいんだ。母さんが特製ダシをわざわざ作ってるらしい。
ダシのレシピは秘密らしい。これは試合前にしか出て来ないから、父さんはこれを食べる為に早く試合をしたいと言っていたぐらいである。
「今回は体重を増やしただけだから、減量は苦労しなかったけど、次からは本格的にやばそうだなぁ」
うましうましと言いながらうどんにがっつく。
うーん。本当に美味しい。大分久々に食べたけど、お店のうどんとは全然違うんだよなぁ。
「拳聖ちゃんは体が大きいものね。普段から節制してるけど、高校生だから体はまだまだ成長するだろうし…」
「成長スピードと階級を上げるスピードが釣り合えばいいんだけどね」
最終的な目標はヘビー級だから、体が大きくなるのはいいんだ。
でも九階級制覇するなら、最初の方の減量はかなり苦労しそうである。
「あ、そういえばお爺ちゃんがスポンサーになりたがってたわよ。今日の試合の結果次第で兄さんを説得するって」
「おお。それはありがたい」
ボクサーにはスポンサーが不可欠。
いや、世界チャンピオンとか上澄みの選手ならファイトマネーでやってけるんだろうけどさ。
トランクスとかにロゴを貼ったりして広告塔になってこそだと俺は思う。
スポーツ選手は人気も重要だしね。
で、母さんの兄さんは神宮寺グループの社長で、いくつもの会社を取り仕切っている。
お爺ちゃんは既にそのお兄さんにほとんどを任せてるらしいが、俺が結果を出せばお兄さんを説得してくれるらしい。
「兄さんも拳ちゃんが現役の時からスポンサーしてくれてたし大丈夫だと思うけどね」
「だといいなぁ」
母さんの兄さん、伯父さんには何度か会った事があるが普通に良い人だ。
良い人だけど、経営者としてかなりシビアな人である。いくら身内とはいえ、俺が広告塔にならないと分かれば無駄金は使ってくれないだろう。
「圧倒的な結果を見せてやるぜ」
「頑張ってね。私も聖歌を連れて見に行くわ。拳ちゃんはデビュー戦でこけたから、真似しないように」
そう。
父さんは一度だけ負けた事があって、それがデビュー戦なのだ。
世界チャンピオンとして華々しい活躍をした父さんだけど、目の上をカットしてドクターストップ。
TKO負けで残念なデビュー戦になったらしい。
その後は無敗で現役引退したが。
そのせいか、今日は俺より父さんが気負ってるっぽいんだよね。
俺はそんなヘマしないようにしないとな。
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