第2章 プロ

第13話 高校生


 俺氏。高校生になりました。

 相変わらずボクシング漬けの日々を送りつつ、時には友達と交流。

 残念ながら彼女は出来てませんが。


 「ボン。決意は固いんか」


 「うっす。母さんにもようやくOKを貰いました。苦難な道になるのは間違いないっすけど」


 「拳聖の熱意に美春が折れたって感じですけどね。俺もあまり賛成はしてないです」


 ジムの会長室にて。

 俺と専属トレーナーの父さんと会長で今後の事を話し合っていた。


 「アマで実績積み上げるのもありやと思うねんけどなぁ」


 「そんな事してたら間に合わないっす」


 話し合ってるのは高校に通いながらのプロデビューについて。俺も最初はアマチュアで実績を積み上げて、飛び級でプロのライセンスを獲得しつつ、華々しいデビューをしようと思っていた。

 でもね。この数年で新しい目標が出来ちゃったんだ。その為には早くプロにならないと間に合わない。


 「9階級制覇かぁ」


 「何を戯言をと一蹴したいところですけどね」


 父さんと会長はうんうんと唸っている。

 でもでも俺の決意は変わりませんよ。

 前人未到の記録に挑戦したいんです。


 俺の目標。

 それは9階級制覇だ。

 昔にフィリピンのレジェンドが8階級制覇したらしい。俺はそれを超えたい。世界最高のボクサーと言われたい。その為には早くからプロにならないといけない理由がある。


 父さんと会長は俺の実力については認めてくれている。中学生の全国大会でも最優秀選手に選ばれたりしてるし。

 プロを長く続けれるなら焦らなくてもいいだろう。現に俺は長く続ける予定ではある。

 でもどうしても超えられないのが。


 「身長の伸びが止まらんとはなぁ」


 「いくつもの病院を回って色々調べてもらいましたが、拳聖の身長はまだ伸びるみたいです」


 そう。身長である。

 高校一年になったばかりの俺の現在の身長は177cm。しかもまだ骨端線が閉じてないので伸びる予定ありときた。

 9階級制覇するにはライト級からスタートする必要がある。

 そしてライト級のリミットは61.23kg。

 これから更に伸びる事を考えると間違いなくそこまで体重を落とせない。


 「今でも結構ギリギリちゃうんか?」


 「今59kgぐらいをさまよってます」


 早くデビューしないと間に合わない。

 既に節制を始めてるくらいだ。相変わらず『超回復』のお陰で脂肪がほとんどない体なのにも関わらず59kg。急がないとなるまいて。


 「その体で59kgってのも充分詐欺やけどなぁ」


 「日々の努力の賜物っす」


 ボクシングに必要のない筋肉はつけないように、細心の注意を払っている。

 それでも軽くついてしまうけど。


 「試合に出れるんは17歳からや。一年はアマで暴れてきてもええんちゃうか?」


 「アマに出るくらいなら、ここの練習生とひたすらスパーリングしてる方が練習になります」


 別にアマチュアを馬鹿にしてる訳ではない。

 現在の天下ジムには世界ランカーや日本ランカーが何人もいるのだ。

 その人達のスパーリング相手に積極的に立候補して、経験を積ませてもらっている。


 俺も『コーディネーション』があるからか、スパーリング相手に望まれたボクシングスタイルに器用に変えられる。それもあって、相手には非常に高評価を頂いてると自負している。


 「いや、お前とスパーすんのは命が何個あっても足らんって言っとる奴らばっかりやぞ」


 「それはそれ。これはこれっす」


 相手の練習が終わったら、勿論俺の練習にも付き合ってもらう。

 ここ数年で磨きに磨いたフリッカージャブと必殺カウンター。スパーリングなのに何度もKOさせて申し訳ないと思ってるけど良い練習になってます。

 流石に世界ランカー相手にはこうはいかないけど。


 「ほな。とりあえずライセンスは取ろか。多少時間は掛かるけど、試合回数こなしてさっさとベルト取ってまお。ボンの身長が伸びる前に」


 「あざっす」


 ふっふっふっ。

 高校に通いながら減量やら試合やらは絶対にきついだろう。それでも俺はやってやる。

 絶対に9階級制覇。そして日本人でのヘビー級チャンピオンになってやる。

 見とけよ世界。俺様の殴り込みじゃい。

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