第14話 プロテスト


 高校生になってから半年。

 中高一貫の高校に通ってた事もあって、友達には苦労しないのは助かった。

 前世とは比べ物にならないぐらいお上品な学校に通わせてもらっててありがたい限りである。


 「皇君、今日もジムなの?」


 「うん。いつも通りだよ」


 「そっかー。みんなでカラオケに行こうって話をしてたんだけど…」


 「ごめんね。また誘ってよ」


 今でもジムは週5で通っている。

 遊びたい盛りで中々友達と遊べないのは残念だけど、それよりもボクシングが楽しい。


 「おはーっす」


 学校帰りにそのままジムに寄り、いつも通りの練習を始める。最近はプロの人とも手合わせさせてもらえるようになり、ますます技術がレベルアップ出来ていてる。


 「お、ボン。もう来とったんか。ちょっと部屋来てくれや」


 「うっす」


 柔軟やら縄跳びやらをしてウォーミングアップしていると会長が声を掛けてきた。


 「一ヶ月後のプロテストに申し込みしといたからな」


 「あざっす! やっとすね!」


 「無事合格した後の対戦相手も既に検討中や。17歳になったらすぐに試合していくぞ」


 「おなしゃす。体重もまだ59kg代をキープ出来てるんですけど、また身長が伸びたんで」


 「最終的にどこまで伸びるんやろなぁ」


 中学の最後の方に9階級制覇という目標を掲げてから少しずつだが減量というか、食事制限をしている。思ったよりもきつくなくて、59kg代をずっとキープ出来ている。もう2kgぐらいは増やせるけど、これから更に筋肉はついていくだろうし油断は出来ない。


 「やっとまともな試合が出来るっすねぇ。デビューが待ち遠しいっす」


 「今のお前に敵う奴が日本におるとは思えんけどな」


 わははは。練習は嘘を吐きませんからな!

 特典のお陰でやればやるほど伸びていく。

 ほんと、努力が必要とはいえ良い特典を貰えたよねぇ。




 ボクシングのプロとは。

 筆記と実技があって、筆記はルールに関する問題、実技は受験者同士のスパーリングによって行われる。


 基本的にC級からスタートして4回戦(4R制の試合)から出場する事が可能となる。

 例外としてアマチュアでの実績を考慮して、C級ライセンスを免除されてB級からスタートする事も出来る。

 俺は中学での実績が考慮されて、今日はB級のテストを受ける事になっている。


 「おおー。結構人がいるなぁ」


 「俺の息子だからな。嫌でも注目が集まるんだろう」


 後楽園ホールに入ると、ガラガラだと思ってたのにチラホラとマスコミやらが目に入る。

 最近はボクシング人気も下火になってきたから、父さんの子供の俺で人気回復を図ろうって魂胆だろうか。

 マスコミって2世選手とか好きだもんねぇ。


 B級ライセンスのテストは現役のプロボクサーがスパーリングの相手になってくれて、合格基準もC級よりも厳しく設定されている。

 今日の相手は日本ライト級5位の人らしい。

 生憎名前すら知らなかったが。


 「なんか不機嫌な顔してるなぁ」


 「当て馬にされたと思ってるんだろう。あれはテストなんて関係なくお前を潰しにくるぞ」


 別に俺がマスコミを呼んだ訳じゃないんだけど。

 華々しくデビューなんてさせてやるかという気概がむんむんと感じられる。


 「倒してしまっても構わんのだろう?」


 「油断だけはするなよ」


 どうやら父さんにフラグは通用しないらしい。

 前世ではサブカルに疎かった俺も、今世ではそれなりに嗜んでいる。有名所を摘んで会話のタネにしてる程度だが。


 服を脱いでヘッドギアをつける。

 俺の体は美術館に置いてある彫刻のように仕上がっている。その体を見て相手のランカーは少したじろいだ様に見える。

 その調子でテストって事を思い出してくれたら良いんですけどねぇ。


 そしてスパーリングが始まる。

 俺は長い腕を活かしたフリッカージャブのスタイル。イメージははじめの一〇の間○である。

 残念ながら途中で読むのをやめてしまったが。


 お互いリング中央付近をグルグル回って距離の探り合い。

 そして最初に仕掛けたのは俺からだった。

 リーチは俺の方が長いし、フリッカーなんて日本人で使う奴なんてほとんどいないだろう。


 「くっ!」


 自分の間合いでジャブを繰り出して相手を近付けさせない。やっぱり対応に苦慮してるみたいだ。


 でも流石は日本ランカー。

 なんとかジャブを掻い潜ってこちらに攻撃を仕掛けてくるが、待ってましたとばかりに相手のパンチに的確にカウンターを合わせる。


 「むっ」


 パンチが浅かったのか、ぐらついたもののなんとは踏ん張って耐えられた。

 うーん。俺もテストって事で肩に力が入ってるのかもしれん。簡単にジャブを掻い潜られたのもそうだし、カウンターチャンスで仕留め損ねるとは。


 相手は仕切り直しとばかりに距離を取った。

 しかし、俺ももう良い感じに緊張もほぐれている。さっきみたいに内に入れたりしない。


 フリッカージャブの回転率をどんどんあげていく。次第に顔を捉え始め、ヘッドギアをしているのに相手の顔がどんどん腫れ上がっていく。

 そして目が腫れ上がり死角が出来た事で、満を辞して右ボディを叩き込み悶絶してダウン。


 そのまま相手は起き上がる事が出来ずに、俺はプロテストをKO勝利で飾った。

 

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