第11話 ランダムミット
「はぁ。はぁ。ぼ、ぼん…。これで小五は詐欺やで。はぁ。はぁ」
いつものランニングも終了。
自転車でついてきていた会長の息がかなり切れている。ちょっと申し訳ない事しちゃったかも?
『超回復』は心肺機能にも作用するのか、俺の成長は留まることを知らない。
自分でもどこまで成長出来るのか、楽しみで仕方ありませんぜ。
「電動のチャリンコにしたら良かったわ…。チャリンコの俺がしんどい思いしてんのに、本人はシレッとしてるのがまた…。拳士、お前とんでもない息子を持ったな」
「はい。やばいですよね」
そうだろうそうだろう。
何せ2歳ぐらいから頑張ってますからな!
「まぁ、ええわ。で? 次は?」
「ここからは日によって違いますね。拳聖はいつも自分で課題を見つけては、自分で解決してしまうので…。最近はコンビネーションを色々試してるみたいですが」
「待て待て。基礎とかも教えてんのか?」
「一通りは。後はもう試合経験だけってレベルですよ」
「なんやそれ…。もうセンスあるって言ってるようなもんやんけ…」
「あ、しまった。驚かせようと思ってたのに」
「もう、じゅーぶん驚いたっちゅーねん」
あのー? お二人で話してる所悪いんですが、次の練習に進んでも?
今日はランダムミットをやろうかなーと思ってます。ボクシングセンスを見せるなら、これが一番かなって。
「もうなんでも来いや! 全部受け止めて世界に羽ばたかしたらぁ!」
「是非お願いしますね。俺もトレーナーとして支えていくつもりですが、一人で受け止める自信がないので」
よーし! やるぞー!
ささっ! パパ上!
ランダムミットやりますぞ!
俺はバンテージを巻いてグローブをつける。
「ランダムね」
「了解」
そう言って始まる高速ミット打ち。
勿論手打ちじゃなくて、しっかりと。
父さんが構えた場所へ正確に打ち込んでいく。
「しっ! しっ! しっ!」
パーンパーンとかなり良い音がなるもんだから、周りの練習生達はリング上の俺と父さんに夢中だ。
父さんは構えるだけじゃなくて、攻撃を織り交ぜてきたりもするので、それを足捌きと上半身の移動で躱していく。
「ス、ストーップ!」
「え? 良い所だったのに」
そろそろ本格的にやるぞって思い始めたところだったのに。思わず素が出ちゃったよ。
「それは予め順番決めてるんか?」
「いえ、完全ランダムです」
「おかしいやろ! 反射神経どないなってんねん!」
会長の突っ込みに周りの練習生も思わず頷く。
それぐらい速いミット打ちだったのだ。
とても小学五年生には見えないだろう。
「それにボンのそのスタイルはなんや! ガードもほぼ下げたまんまで、ちょくちょくスイッチしとるし!」
「あ、これはですね。自分なりに色々ガードとか固めてやってみようと思ったんですけど、中々しっくりこなくて。このほぼノーガード戦法に落ち着きました。一応ノーマルなスタイルも出来ますよ。後スイッチしてるのは俺が両利きっぽいからですね。両方の手を思い通りに同じ強さぐらいで打てるので。その時々で使い分けてます」
ちょっと長文説明になってしまった。
それでも会長は聞き逃さず、しっかり聞いていたみたいで、聞き終わった会長は達観していた。
「天才なんて言葉でも不足するレベルやで…」
「ランダムが信じられないってなら、会長がミットを持って好きにやってもいいですよ」
父さんが会長にミットを渡す。
会長は意を決したようにミットを手にハメる。
そしてまた始まる高速ミット打ち。
俺はフリッカージャブを多用するから、普通はジャブのスピードが遅れる筈なんだよね。
でも日々の懸垂のお陰なのか、俺のフリッカージャブはかなり高回転で連打出来る。
ふふふ。どうよ会長。褒めてくれてもいいんだぜ。ここまで連打をまとめれるレベルになるまで、かなり練習したんだ。
攻撃を混ぜてくるのもしっかりと見えてる。
カウンターを叩き込む余裕があるぐらいだ。
流石にミットを構えてないからやらないが。
でも叩き込めるタイミングで、打ってはいけないってのはちょっとストレス…。
って事で、鬱憤を晴らす為に会長にはもう少し付き合ってもらおう。
会長! ここからはコンビネーションも混ぜていきますぜ! お覚悟を!
「これ、もうちょい成長してライトフライに放り込んだら、ベルト持って帰って来るんちゃうか?」
「流石に世界戦はそこまで甘くありませんよ」
ミット打ち終了ー。
中々有意義な練習だったんじゃないかな。
いつもは父さん相手にやってるけど、最近はちょっとした癖も分かるようになってきたから、予想が出来るようになってたんだよね。
新鮮な感じでとても楽しかったです。
会長もひーひー言いながらもミットは良い音を鳴らしてくれた。気持ち良いったらありゃしない。
「これ、アマに出してええんか…?」
「う、うーん」
何も違反してないでしょ! ちょっとチートがあるだけ! それがズルいんだけどね!
試合には普通に出たい。
いくら俺がここまでやれてても、練習は練習だ。
やっぱり試合に出て試合ってのがどういうもんなのかを肌で感じたいし、試合勘ってのも養いたい。
練習と試合では疲労も違うだろうし。
「とりあえず一回出してみてから…」
「せやな。ボンが本番でトチ狂う可能性もある訳やし。とりあえずは明日からもここで練習していけや。スパーリングの相手もおることやしな。これぐらい動けるんやったら中学生に混ぜても問題ないやろ」
やった! スパーリング!
明日からも楽しみになって来たぞ!
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