第9話 階級


 俺氏。小学四年生になりました。

 友達100人出来るかななんて、遠い昔の話。

 そもそも言ってないけど。やっぱり小学生の頃とかって足が速かったり、運動神経が良い人がモテがちだよね。男からはすげーって褒められて、女からはキャッキャ言われる。

 小学生。良い。これが中学高校とかになってくると、嫉妬やらで面倒になるんだよね。

 なんとか上手く立ち回らないといけない。


 「母さん。お代わり」


 「拳聖ちゃん。母さんじゃなくてママでしょ?」


 「俺ももう高学年なんだけど…」


 晩御飯が足りなかったのですかさずお代わりを要求する。食べ盛りなんですよ。


 母さんは相変わらず親バカを炸裂させている。

 未だに美人なままで、本当に歳を取ってるんだろうかと疑ってしまう。父さんはちょっと老けたのに。それでもカッコいいんだけど。


 「にーに! ママでしょー!」


 「そうだね。ママだね」


 妹の聖歌が可愛い。

 母さんの真似をしてニコニコ笑っている。

 母さんに似て将来は美人になる事だろう。

 嫁には出さんぞ! 近付く不埒な男がいたら俺が必殺の左ボディをかましてやる。

 既に父さんから許可はもらってるんだ。父さんも右ストレートをぶちかますと宣言している。

 勿論冗談だけどね。



 「うーん…」


 「どうかした?」


 いつものボクシングの練習後。

 父さんは何故か唸っていた。

 最近はストレートやフック、アッパーの合格点を貰い、足を動かしながらのコンビネーションに挑戦してるところだ。

 コンビネーションは無限大。

 これは練習し甲斐があるぞと意気込んでた所なんだけど。


 「拳聖がでかいなぁって」


 「でかい? 身長の事?」


 「そう」


 因みに父さんは俺が小学2年の時にボクサーを引退して正式にトレーナー資格を取っている。

 最後のフェザー級の防衛戦は凄かった。

 1Rから猛打猛打猛打。ゴングから僅か80秒でのKO勝ちでまだやれるのではと惜しまれながら引退した。


 「まだ4年生だよ?」


 「でも他の子達より一回りは大きい」


 ふむ。別に良いのでは?

 まだ成長期も来てないし、これからと伸びていくだろう。やはり男としては高身長に憧れますし?

 父さんは169cm(本人は170cmだと言い張っている)だからあんまり期待してなかったんだけど、このまますくすくと成長して欲しいもんですな。


 「将来的に階級で苦労しそうだなと思って」


 「? 海外では中重量級ぐらいが盛んだし、相手には困らないと思うんだけど?」


 「いや、そうなんだけどな。日本人はどうしてもその辺の階級では下に見られがちだし」


 なるほどなるほど。

 確かに日本人は軽量級は活躍してるけど、中重量級はイマイチって印象だなぁ。

 最後はミドル級だったかな? その階級で世界チャンピオンになった人以来、有望な選手が出て来ていない。それも何年前なんだって話だし。

 海外ではミドル級は重量級ってみなされてないしね。


 「俺が日本人初のヘビー級世界チャンピオンになるという訳か」


 「拳聖は大物だな」


 苦笑いしながら頑張れと応援してくれる父さん。

 夢は大きくヘビー級チャンピオンですよ。

 俺が日本人でもやれるって事を見せてやる。

 特典でズルさせてもらってますが。でもでも、それに胡座を欠かずに努力してるから。


 「まぁ、ここからあんまり身長が伸びないって可能性もあるし。そういうのはもう少し先の話だよね」


 「確かにそうだな。よし。クールダウンして今日は終わるか」


 俺は寝る前に眼球酷使トレーニングしますけどね。未だに続けてますよ。ってか、ボクサー引退まで続けるつもりです。

 『コーディネーション』を養う訓練は高校ぐらいで辞めようかなと思ってるけど。

 12歳ぐらいを最後に伸びなくなるみたいなんだよね。俺は特典もあるし、可能性があると思ってとりあえず高校生までは続ける予定だ。

 その後は効果次第かなと思ってる。効果がないなら別の鍛錬もしたいしね。




 「うーん。小学五年生なのに彫刻みたいな体だな」


 更に一年が経った。

 俺は家の広い脱衣所にて鏡の前に全裸で立ちながら、独り言を呟く。


 ボクシングに必要ない筋肉はなるべくつけないようにしてるんだけど、それでも毎日馬鹿みたいに練習してたら、自然と関係ない場所も多少はついてくるんだよね。減量で苦労するから嫌なんだけど。


 ボクシングで最高は何階級制覇なんだろ?

 誰も文句をつけれない結果を残して、ボクシング史上最強の選手と言われたい。減量さえなんとかなるなら、階級制覇の世界記録にも挑戦したいなぁ。

 強い相手にひたすら対戦を挑みまくる、戦鬪狂みたいな事をすれば自然と認めざるを得ない流れになっていくかもしれないが。


 俺は試合が終わった後に復活するのも早いだろうし、かなり短い試合間隔で試合を出来ると思う。

 100勝0敗100KOとか伝説じゃなかろうか。

 後の世で誇張を疑われるぐらいの成績を残したいね。


 「で、小学五年生になったって事でとうとうジムに入会するんだよね」


 アマチュアの大会は小学五年生から参加出来る。

 って事で、父さんがお世話になっていたジムに明日から通う事になっている。

 もう楽しみで仕方ない。流石に同年代は少ないだろうが、色々なボクサーを見れるんだ。

 参考になる所は全部盗んで自分のモノにしてやるぜ。

 

 


 

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