第3話 あらら?
「おぎゃー!」 (教えてくれー!)
ってあら? あらら?
おぎゃーとな? もしかしてもう転生しちゃった感じですかい?
あの社畜が最後に不穏な雰囲気を醸し出してたからどうなるか教えて欲しかったんだけど、そのまま転生してしまったらしい。
まぁ、良いか。
貰った特典を駆使して異世界で楽しく生きよう。
そう思って周りを見渡してみる。
目が見えるって事は生まれてから結構経ってるのかな? 確か赤ちゃんって生後まもなくは目が見えないんだよね?
ってあら? あらら?
見渡す限り日本というか、現代風景のような?
異世界なんだよね? あ、俺が勝手に文明が遅れてるって認識してただけかな? 下位世界とか言ってたから、てっきり中世的な? そんな感じの世界だとばっかり。
「あら起きたのね。ご機嫌いかがでちゅかー?」
本当に異世界だよなと思いながら、キョロキョロと周りを見渡してると、一人の女性がやってきた。
母親だろうか? 中々の美人さんで…。
ってあら? あらら?
なんかこの人を知ってる様な? TVで見た事あるような? なんかのCMで見た気がする。
なんたら美春とか。そんな感じの名前。結婚して苗字がカッコいい感じになったんだよ。
気のせいかな?
「可愛いわねぇ」
抱っこされてよしよしされる。
ふむふむ。これが忘れてた母親の愛。なんか心にグッとくるものがありますね。
「おぎゃー! おぎゃー!」
「あら。機嫌を損ねちゃったかしら?」
す、すみません。
どうやら感情の制御が上手くいきません。
感極まってしまいまして。
「美春ー! 大丈夫かー?」
ドタドタと。デカい足音をたてながら部屋に入ってきたのは一人の男。暫定父親である。
「拳ちゃん。静かに入ってきて」
「おお! すまんすまん!」
平謝りしながら俺を覗き込みニカニカと笑う父親。こちらも母親に負けず劣らず中々の美形で。
うーん。この人も見た事あるような…。
何で見たんだっけなぁ。
ってあら? あらら?
見た事あるって事は? ここは異世界ではない?
現代に転生したのかな? 父親も母親を美春って言ってたし…。
社畜さん失敗してらっしゃるのでは? これ、俺が存在して大丈夫なんでしょうか?
記憶も浄化されてないしさ。現代に戻るなら記憶処理をするって言ってたもんね。
特典もどうなったんだろう。
『柔軟な体』『コーディネーション』『超回復』
すぐに確かめる事は出来ないよね。赤ちゃんって体が元から柔らかいって聞いた事あるし。
うーん。社畜さんから状況説明とかしてくれないもんですかねぇ。
「おっと。寝てしまったか」
「ふふっ。可愛いわぁ」
ここは現代なんだろうか。
そんな事を思いながら眠ってしまった。
「いいぞー! 頑張れー!」
「その調子よー!」
どうもどうも。
俺氏。現在初めてのよちよち歩きを両親に実演してる所であります。
あれから少し経って俺も現状を受け入れ始めた。
多分、これは現代に転生している。
周りにあるものは見知ったものばかりだし、何より両親が前世で有名人だったからだ。
父・皇拳士。
何処かで見たと思ったら結構有名なプロボクサーだった。軽量級で三階級制覇をしたとかなんとか。
ニュースでやってるのを見た。残念ながら俺はボクシングに詳しくないんだけど。
母・皇美春。旧姓神宮寺。
この人も有名人でした。モデルに女優とマルチに活躍した、一時はTVで見ない日がないと言われたぐらいに引っ張りだこだった女性だ。
結婚して、すぐに妊娠したから俺が死ぬ直前は活動を制限してるみたいな話をニュースで見た。
これが眠気と戦いながら必死に話を聞きつつ、情報を集めた成果である。
「きゃー! 良く歩けましたねー!」
「流石は俺達の子だ!」
ただ歩いただけでこの喜び様である。
立派な親バカさんだ。
しかし親が居るというのは嬉しいもんだ。
今ならなんだって出来る気がする。
「まーま!」
「まぁ!」
「ぱーぱ!」
「おお!」
なんか喋れた。因みに俺はまだ七ヶ月ぐらいである。これが早いのか遅いのかは分からんが。
なんか体が思った通りに動かしやすいんだよね。
優秀な遺伝子から生まれたお陰だろうか。
「喋った! 喋ったぞ! 今日はお祝いだ!」
歩いて喋るだけで褒められる。
赤ちゃんとはなんとボロい商売か。
「でも早いうちから歩くのはあんまり良くないって先生は言ってたわ」
「なぬ? そうなのか?」
なぬ? そうなのか?
思わず父親と同じ反応をしてしまったぞ。
「この時期はまだ筋肉がちゃんと発達してないから歩かせると発達途中の筋肉に悪影響を与えるらしいの。十一ヶ月目ぐらいなら発達してくるから問題ないみたいだけれど」
「そりゃいかん! 喜んでる場合じゃなかったか!」
「私も一緒になって喜んじゃったけど気を付けないといけないわ」
ほー。十一ヶ月。
後四ヶ月ぐらいは大人しくはいはいしておいた方が良さそうか。気を付けなければ。
「拳聖は将来ボクサーを目指してくれるかなぁ」
「私は健康に育ってくれればそれで良いわ。あなたがカッコいい姿を見せれば目指してくれるかもね」
ボクサー。ボクサーね。
生憎とルールすらまともに知らんのだが。
なんかパンチで倒せば良いんだよねってぐらいのにわか知識しかないよ。
「拳聖が物心つくまで現役でいられるかな」
「まだ30にもなってないでしょ。この子が5歳ぐらいになるまで勝ち続ければいいわ」
「簡単に言ってくれるな」
大丈夫。既に覚えてますぜ。
とりあえずボクシングとはどういうものなのか詳しく教えてくれませんかね。
話はそれからだ。
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