第4話 親としての責任②

 俺はモモコにばかり気を遣うのか不思議でならなかった。


 モモコが産まれてからは夫婦の時間もろくになく、全てがモモコ中心の生活になった……声が出せないハンデを背負っていたから、気を遣うのは仕方ないのかと思っていたが、キャンプ場での出来事で運良く声が出るようになった。


 少し辛い目にあったけど、声が出るようになったんだから『結果オーライ』だと思っていると、1人になるのが怖いだとか、暗い場所が怖いだとか言いだして、結局は気を遣い続ける事となったのだって。


 俺は苛立った……声が出るようになっても、結局はモモコが中心の生活になるのかよ。


 子は親を選べないとかいうけど、親だって子を選べないんだよ!


 それなのに、親父もお袋もモモコ、モモコと言いやがって、俺はこれまで溜め込んでいた想いをぶちまけた。


「なんなんだよ!俺は2人の息子だぞ?息子がモモコのせいで我慢を強いられる生活をしてるのに、俺に気遣わずにモモコばかり庇うのかよ!」

「お前っ!そこまでアホやったんか!」


『ゴッ!』


 俺は親父に思い切り殴られた。当然睨み返すが今度はお袋から水をかけられた。


『バシャッ!』


「なんなんだよ!」

「それはこっちのセリフや!お前には親としての責任感はないんか!」

「親の責任ってなんやねん!ガキの為に不幸になるのが親の責任なんか?」

「お前……ホンマにそう思ってるんやな?」


 親父の顔が見た事もないような形相になり、念を押すように聞いてきた。


「思っとるから言ったんだよ!」


 俺が返事をすると親父に殴りかかられ、抵抗できずにひたすらなぐられ続けた。


『ゴッ、ゴッ、ゴツン』


「お前とは親子の縁を切る!仕事も来んでええから、二度とその顔を俺の前に晒すな!」

「あっぐっ……」

「早う出て行かんかい!」


 親父が近付いて来て、また殴られると思い、逃げるように家から出ていった……


 本当に親子の縁も仕事も切られたのか不安になった。明日は仕事に顔を出さずにお袋に連絡してみて、親父の状況を確認してタイミングを見計らって謝る事にした。


「はぁ、こんな顔で帰ったらマオは驚くだろうな……」


 俺は殴られた痛みに耐えながら帰宅すると、誰も居ない家に驚いたので、慌ててマオに連絡をするとお義母さんがでた。


『マオと子供達はしばらく実家で過ごすから』と伝えられると俺が話す前に電話を切られた。






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娘の声を聞けた日 小桃 @tama19720728

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