第3話 親としての責任①

◇◇◇ヒロ視点です


 仕事をしてると、珍しく親父から電話がかかってきた。


「おう、親父から連絡なんて珍しいな?」

「帰りに家へ寄ってくれるか?話しときたい事があるんや!」

「判った。少し遅くなってもええか?」

「終わったら直ぐに来い。ええな?」

「おう、判った。直ぐ行くわ」


 機嫌が悪いのか?普段と雰囲気が違うように感じた。なにか仕事でヘマをしたのかと思い、その後は少し考え事をしながら作業を終えて、俺は急いで実家へ向かった。


(なんで呼ばれたんだ?思い当たる節がないぞ)


「ただいま〜、親父来たぞ!なんの用事?」


 俺が家にあがってリビングへ行くと、親父は腕を組んで座っていたが、明らかに機嫌が悪いと判った……


「座れ」

「お、おう……それで」


 親父の向かいのソファーに座って話しかけようとすると、お袋がリビングへ入ってきて俺に声をかけてきた。


「ヒロ、ここへ寄るってマオちゃんに連絡したんか?」


 どうやらお袋も機嫌が悪いようだったので何とも気不味い雰囲気になる……


「いや、してへんよ。少し遅くなる程度やもん」

「あんたが帰らんと、マオちゃんが1人で2人の世話をせなあかんやろ?」

「それがマオの仕事やろ?俺は外で仕事してるんや。なんも問題ないやろ」


 お袋が俺の家庭に口出しをするので、少しイラつきながら返事をすると、親父が話しに加わってきた。


「仕事が終わったら家に帰って手伝えばええやろ。お前は他の職人と飲みに行ってると聞いとるぞ。それは仕事なんか?」


 同じ仕事をする側だから、俺を援護してくれと思ったのに……親父もお袋側かよ。


「誘われたら付き合うのも仕事やろ?俺は親父の後を継ぐんやから、職人と付き合いも仕事やと思ってるんや!」

「俺が飲みに行く時や遅くなる時は、クミに連絡はしとったぞ。それに飲み会の場でお前は……モモちゃんがキャンプ場で迷子になって、そのおかげで声が出たから、目を離して良かったとか言ったそうやな!モモちゃんがどれだけ苦しんどるか判っとらんのか?」


 またモモコかよ……モモコ、モモコと元をいえば、モモコが喋れないからみんなが苦労してたのに、少しは辛いかも知れないけど、周りの家族にとっては最高の結果だと思わないのか、それが不思議に思った。


「あんなもんは、マオが甘やかさんかったら直ぐに治るんや。親父達もモモコに気を使い過ぎやぞ?甘やかすから調子に……」


『ゴッツン!』


 俺の話の途中、親父にいきなり殴られて思わず睨み返すと、親父は歯を食いしばりながら泣いていた。


「お前がモモちゃんの事を口にするな!あんな小さな子が……俺は時間があれば顔を出してるけど、あそこまで苦しんでとは思わんかった。あんな状態になるんやったら、昔のままの方が良かったと思えたぞ」

「ホンマや、うちは今日も会ってきたけど、トイレも1人で入れずドアを少し開けてても怖がってて『ばぁばいる?』ってずっと確認してたわ……」


 そう言って、お袋まで泣いていた。


 逆に言えばそこまで大変なんだから、甘やかさずに厳しく接して治すべきだと俺は思ってしまう。なんでみんなそう思わないんだ?

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