第2話 距離を置く決意

 ヒロ君との考え方の違いにより、2人の溝は深まるばかり……夫婦間の会話も減ってくると、ヒロ君は仕事から戻る時間が遅くなり始めるようになってきたの。そうなると、私1人で2人の子供達の面倒を見る事が厳しくなった。


 今のままでは子育てが成り立たないので、母へ相談をする為にモモコとカイトを連れて実家を訪れると、父母が暖かく迎えてくれた。


「ただいま、忙しいのにごめんね」

「おかえり、少し痩せたんちゃう?」

「少し痩せたかな?」


 母が少し心配そうに話しかけると、父は私の方を『チラッ』と見てから子供達に声を掛ける。


「モモちゃん、カイくん、じいじと遊ぼうか、こっちへおいで!」

「じぃじ」「じっちゃんいこう」


 父が2人を連れて遊び部屋へと移動すると、私は母と一緒に応接間へと移動して、子育ての相談に乗ってもらおうとすると、応接間には義母も来ていたので、驚きながら挨拶をする。


「こんにちは、お義母さんがどうしてここに?」

「マサミから連絡をもらってな。私も話しを聞いとこうって思ってん」


 母がお義母さんへ連絡してたのか、同級生だから話しは筒抜けなのかな?私達の観点だけじゃなく、ヒロ君側の観点からも聞いてもらう方が良いと思った。


 私が母と義母に夫婦間であった事を話し終えると、義母はなにも悪くないのに深く頭を下げてきた。


「マオちゃん、ごめんな。そんなええ加減な息子やと思ってへんかったわ……家に呼んで説教しとくから勘弁してな」

「うちは思うんやけど、しばらくこっちへ帰っておいでよ。かなり疲れてるみたいやし、少しリフレッシュせんと身体を壊すやろ?」


 母が私の体調を気にして、実家で少しリフレッシュする事を勧めてきたけど、ヒロ君を1人残す事になるので直ぐに答えを出せなかった。


「でも、ヒロ君が1人だと大変だから……」

「マオちゃんはここへ残っとき。うちからヒロに連絡してうちへ来いって伝えとくし、来たらお父ちゃんにシメてもらうわ。あのアホと少し距離を置いたらええんよ」


 義母も実家でゆっくりする事を勧めてくれたので、言葉に甘える事にしたの。話しを終えてから遊び部屋を覗くと、父と3人で嬉しそうに遊ぶ輪に加わって、一緒に遊んで楽しんだの。


 私達3人はこの日から、家族4人で暮らす日が訪れる事はなかったのだった……

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