ある店舗での話


私は、冷蔵庫である。


これは、私の置かれている店舗での話。




おじいさんの家から戻ってきた私を綺麗に掃除をしながら、二人の店員が話していた。


店員の名前は、悠斗と和哉。


悠斗が言う。


「この冷蔵庫、呪われてるらしいぜ。」


えっ?何?私の事?


悠斗の言葉に、和哉は、声を上げて笑う。


「呪い?そんなもんあるかい!」


そうそう!私は、普通の冷蔵庫だ。


「だってさ、最初の持ち主は、家族全員殺して、冷蔵庫の中に入れてたらしくて、次は、独り暮らしのじいさんは冷蔵庫の中で凍死してたらしいぜ。」


「お前、なんで、そんな事を知ってるんだ?」


「店長が話してんのを聞いた。」


立ち聞きなんてして……いーけないんだ、いけないんだ!


フフフと鼻で笑う和哉。


「それが本当だとしても、そういう事を言うなよ。買い手が居なくなるだろ。」


そうだそうだ!


「だから、こうやって、新品みたいに綺麗にしてんじゃん。」


悠斗は、スポンジで私のボディーを擦りながら言う。




冗談じゃない!呪われてるなんて。


最初の家族は、お父さんが会社をクビになったのがいけなかったのだ。


本当は、仲の良い家族だったんだ。


次のおじいさんだって、私の中で幸せな顔をして死んでいったんだ。


何も知らないで勝手な事ばかり。




綺麗に掃除され、店舗に置かれた私。




店に若いカップルがやって来た。


「冷蔵庫も、いろいろあるわね。」


「本当だな。色も、色鮮やか。でも、やっぱり冷蔵庫は、白かなぁ。」


そうそう!冷蔵庫は白。


「えーっ。ねぇ、このグリーンとか赤、可愛いじゃない?」


ダメダメ、そんな色つき。


私みたいに、真っ白がいいんだって。


「あれ?この冷蔵庫、5000円だって。ちょー安くねぇ?」


「本当だー。」


二人は、私の前に立ち、そう言った。


うんうん。お買い得だよ、私は。


「でもさ。安過ぎない?古いんじゃない?」


まぁ、五年は経ってるけれど、まだまだ現役だよ。


「型は、少し古いけど、綺麗じゃん。」


うんうん、分かってらっしゃる。


「でも、やっぱり白は汚れるし。冷蔵庫は、新しいのにしようよ。」


「うーん……。そうだな。」


二人は、そう言って、店を出て行った。


おいおい、冷やかしかよ。


白は、汚れるって。


掃除すればいい話だろ。


分かってないな……全く。


白だから、いいんじゃないか。


いろんな色に染まって。


例えば…………。







真っ赤な血の色とかね。






私は、冷蔵庫である。


とある店舗で、私の家族になってくれる人を待っている。


早く、あなたのドラマが見たいな。







楽しみだ。











ー【完】ー

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冷蔵庫 こた神さま @kotakami

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