第2話

 暴力の荒野の中にあって、力を持たぬ者は、奪われることしかできないのだろうか?




「誰か! 誰か助けてー!」

 真っ昼間、掘っ立て小屋の並ぶ集落の往来に、かん高い少女の悲鳴が響く。

 三人の悪党が、一人の少女を連れ去ろうとしていた。

 集落の住人たちは、内心憤りを感じながらも、武装した三人組の狼藉をただ見守ることしかできない。

 ただ、少女の父親が、三人の悪党の一人の足にすがりつき、哀願するばかりである。

「どうか! どうか! 娘を! アンナを! 私の一人娘を放してください! 食料はすべて差し上げます!」

 悪党の一人が答える。

「ヒャッ! 食いもんは他の連中からぶんどったんだ。食料が集まりゃ、あとは、俺たちに必要なのは女とのお楽しみだろ? 決まってんだろ?」

 他の悪党二人がゲラゲラ笑う。

「娘は、娘は、まだ十五歳なんです! まだほんの子供です! どうかお慈悲を! 見逃してやってください!」

「へへへ、青い果実か。確かに体つきはまだまだだが、かわいい顔してんじゃねえか。俺たちガトリンガン・ジョニー一味が、アジトでたーっぷりとかわいがってやるぜ。喜びな。俺たちがお前を一人前の“女”にしてやる」

「いや! 助けて! お父さん!」

「ああ! アンナ!」

 悪党の蹴りが父親に命中し、父親が地面に転がった。

 少女は悪党の肩に担がれ、じたばたともがきながら運ばれて行く。

 この可憐な少女の運命やいかに?

 そう思ったその時だった。

 チリン! チリン! チリン!

「そこまでだ」

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