第3話獄上の伝説
「んおー、ギリ君じゃん。むっちゃ慌ててどした?」
「
「おっ、赦しね! おっけー、じゃあ早速コクってみ?」
のえるが二つ返事で言うと、ベルフェゴールの3倍はある体躯を侘びしく丸め、ギリアムは太い指を組んで床に
「おお聖女のえる様、どうか私の罪をお聞きください。私は愛する妻と子がありながら、今とあるオークの女に心惹かれております。いいえ、それだけではない、頭の中ではとてもここでは申し上げようがないほど、そのオーク女との
オエッ、と、ベルフェゴールは顔を背けてえづいた。
この筋骨隆々の牛の魔族が、豚に近い魔族であるオークと不倫寸前、ビーフがポークに
顔をしかめていると、ギリアムの声が震え始めた。
「あの女も私に対してまんざらではないらしく、最近では露骨に誘惑を繰り返すようになってきて……。最近ではあの女のことを考えて職務も手につかず、何もかもが上の空――おお、我を形作りし何者かよ、なぜに汝はこのような誘惑を我の側にお遣わしたもうたか……!」
ぐすっ、ひっぐ……と、ギリアムは遂に泣き出した。
オイ、今職務が手につかないって言ったか四天王?
給料下げようかな。
「聖女のえる様――このような罪深き私でも、聖女はその
その問いかけに――すう、と息を吸い、瞑目したのえるが――。
数秒後、ゆっくりと両手を顔の横に掲げ――バッ、とダブルピースを作った。
「おっけー! ウチが
わああああっ、と、ギリアムが床に突っ伏して泣き喚き始めた。
コイツ、四天王のくせに魔王をガン無視でギャン泣きとは随分太い野郎である。
しかし、決して見た目がいいわけではないギリアムにものえるは優しい。
その筋骨隆々の肩に手を置き、安心させるように撫で擦る。
「んもー、ギリ君は見た目によらずメンタル紙だなぁ。身体だけじゃなくメンタルも鍛えてかないとそのうち本格的にキャパるぜ? それと浮気はダメだよ?」
「はい……はい! 今のお言葉で目からウロコが落ちてございます! たかがオーク女の誘惑などに私はもう負けません! 愛する妻と子を一生大事にしていきとうございます!」
「あはは、そうだよその意気だよ。それとたまには奥さんと二人きりで温泉とか行けばいいんじゃね? 奥さんきっと喜ぶぜ?」
そのさまを見ているベルフェゴールの脳裏に――。
幼き日に何度も聞かされた古の
【その者、緩き衣を纏いて不毛の野に降り立つべし
失われし聖と魔の絆を結び――】
「遂に我らを、白き清浄の地に導かん――」
そう、それは魔族と生まれついた者なら知らぬものはない伝説。
数百年前、とある魔族の大予言師が、死の間際に遺したと言われる救済の
「魔族に優しいギャル」――そう呼ばれる存在を
◆
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