第8話 部活

 入学式から数日が経った。最初はどうなるかと思ったが、不登校になることもなく、意外と悪くない日々を過ごせている。



「草野くん、そろそろ行ける?」


 声をかけて来たのは同じクラスの岡森さんだ。今日は僕と一緒に日直をしていて、放課後に先生に仕事を任せられている。


「大丈夫だよ、行こうか」


 荷物を持って移動を始める。全く話したことがないので、いざ2人きりになると少し気まずい。


「…そういえば、大島さんと仲いいんだよね」


「春希のこと?そうだね、幼馴染だから」


 最近、岡森さんと春希は話しているのを見たので友達になったのかもしれない。


「なんでバスケ辞めちゃうのか知ってる?」


「え?2人は前から知り合いだったの?」


 なぜ春希がバスケをしていたことを知っているのだろう、と考え尋ねる。


「バスケの大会で知り合ったんだよ。私も中学の時バスケ部で」


「なるほどね、確か中学の時に負けて諦めがついたって」


 入学式の前に春希から聞いた話を思い出す。あの時少し恥ずかしそうにしていたのを覚えている。


「え!あーそうなんだ、私が聞いても曖昧にしか答えないから」


「…もしかして、春希内緒にしてたのか?悪いことしたな」


 あの時は秘密にしている素振りもなかったので、てっきり話してもいいことだと思ってしまった。


「いや、多分言いにくかったんだと思う。だって、私が大島さんの最後の試合の相手だったから…」


 少し気まずそうに話す岡森さん。

 中学の地区大会の範囲を考えれば、同じ高校に集まるのも、そんなに不思議なことではない。

 でもまさか身近に、関係してる人がいるなんて驚きだ。


「そうだったのか」


 春希は何も言ってなかったが、中学の岡森さん達のチームが、春希に引導を渡したということだ。


「あのさ、中学の春希のこと教えてもらってもいい?」


 同じ中学なのにほとんど知らない僕は、なぜか居ても立っても居られない思いがして、そうお願いする。


「いいけど、私も付き合いは短いし、知ってること少ないよ」


 その後、日直の仕事が終わるまで話を聞いていた。



 教室に戻ると、柳瀬くんと春希を見つける。最近、3人で帰ることが多くなっている。


「勝、帰ろうぜ!」


 柳瀬くんには名前でいいよ、と言って名前で呼ばれることになった。


「あ、柳瀬くんも待っててくれたんだ」


 僕は、名前が言いにくいので「柳瀬くん」呼びを続ける予定だ。


「2人には申し訳ないけど、やっぱり部活見に行かない?」


 部活見学の時期はもう始まっている。しかし、僕たち3人は帰宅部でいいという話を少し前にしている。


「え、入りたい部見つけたの?」


 中学で僕が帰宅部だったことを知っている春希は、不思議そうに聞く。


「まあ、ちょっとね」


 別に自分が入りたい部があるわけではないので、少し曖昧な反応をしてしまう。


 ただ岡森さんの話を聞いて春希がバスケを辞めるのがもったいなく思えた。辞めるにしても運動が好きだったのに、すぐに帰宅部と決める必要はない。そう思ったので部活見学を提案する。



 そして3人で部活見学に向かうことになった。

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僕は当て馬で負けず嫌い、でも世界で一番優しい幼馴染がいる @makimakitori

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