第6話 克服?
「どうするの?」
春希が尋ねる。これはラブレターに見えるが全然そんなことはない、なんなら果たし状と言った方が近いかもしれない。そんな中田恋からの手紙についてだ。
「……行こうと思う」
どうにかするつもりではあった。それは昨日の段階で決めた事で、忘れることは無理だと結論づけたから。
「…そっか、頑張って」
「ありがとう春希。柳瀬くんもごめん、悪いけど先に帰ってて」
「え?なるほど、頑張って」
「これはラブレターじゃないけどな」
僕がそう言うと、また困惑する柳瀬くんがいる。そして、僕は2人に背を向けて歩き出す。
僕はあの出来事から少し経って不登校になっていった。実際そうだが、あの告白の関係で不登校になっていたと恋も考えているのだろう。
ただ、僕は自分の惨めさに耐えられなくなったから、塞ぎ込んでいたのだ。なので、距離を置いて考えないようにすることで、対応しようとしていた。これは失敗してしまったが。
多分恋が今、何をしても約半年間の苦悩が晴れることはない。それでも顔を見て話す事で何かが好転するような気がして。
考えながら歩いていると校舎裏に着く。そこにはもう恋がいる。
「久しぶり、勝」
「ああ、久しぶり」
「聞きたいことがあるんだけど…勝が不登校になってたのってあの時の告白のせい?」
「うん、実はそう」
「…なんでか分からなくて、聞いてもいい?」
少し覚悟を決めて答える。
「恋が好きな人がいて、僕がダシに使われたって思ったから」
「え、、なんでわかったの」
そして恥を忍んで説明をした。俺の告白のことを友人達に話している所を見たことなどだ。
すると、恋は堰を切ったように話し出す。
「あーそうだったんだ、ごめんね。告白の時の勝が真剣に見えなくて、いいかなって思ったんだよね。まさか不登校になるとは思わなかったよ」
「あー…そうだったんだ」
「あと勝の不登校のこと心配で勉強集中できなくて、栄光高校落ちちゃったけど勝は?」
「僕も今回のことが原因かな」
「そっかー、ごめんね。」
「ああ」
「じゃあそろそろ行くよ、健勝高校では不登校にならないようにね」
言いたいことを言って帰っていったような印象を受ける。
多分、彼女は責任感が強いのだろう。僕が中学生の時に惹かれていたのは、この責任感の強さからくる行動によるものだったのかもしれない。
しかし、今はその彼女の責任感に対して不快感を持つ。面と向かって話したのにもやもやした気分が残る。
(俺も帰るか)
そして、ゆっくりと歩いていると正門に春希を見つける。
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