第4話 新クラス
「急がないと」
濃すぎる経験をしたせいで、興奮し寝るのが遅くなってしまった。
そして今日は、また仲良くなれた幼馴染、大島春希と一緒に登下校する約束をしている。
何とか間に合い電車に乗ると、前の駅で乗っただろう春希を見つける。
「おはよう!」
「おはー」
前回少し情けない姿を見せたので、努めて明るく声を掛ける。
「元気そうで良かったよー」
そう言って、ほっと一安心した様子を見せる。
「ああ、ありがとう」
面と向かって心配されることが、少し照れ臭く感じる。昨日はそんなに表情に出ていただろうか。
しかし、今日は覚悟をしてきている。半年くらいなら逃げるが勝ちと考えていたが、高校3年間は捨てるには惜しすぎる。
「そういえば、部活はまたバスケ部に入るのか?」
恥ずかしくなって、話題を変える。しかし、これも聞きたかったことだ。
「うーん、まだ決めてなくてどうしようかな」
「バスケ、熱心にやってたと思うけど、やめていいのか?」
春希が部活で忙しくなったことも疎遠気味になっていた一因でもあるだろう。
「あー、中学の時にボロ負けして諦めついたよ。あはは…」
「そういうものなのか」
帰宅部だった勝はピンと来ていない。小学生の時だったら諦めるなんて言葉を使った記憶がなかったので、少し意外に思う。
「相手はどんなチームだったんだ?」
そこから学校に着くまで、春希は楽しそうにバスケの話をし始めた。それだけ綺麗に引導を渡されたのだろう。
そして僕たちのクラスである1組に向かう。ちなみに恋は2組なのでここにはいないはずだ。
昨日は入学式のみだったので、しっかりした顔合わせはこれが初めてになる。
「じゃあ、またー」
「おっけー」
それぞれ席に着く。少し前まで不登校だったので、もっと不安になると思ったが、竹馬の友が同じ教室にいることは想像以上に心強いものだ。
このあとクラスで自己紹介をしたり、学校の規則が話されたり、と普通のホームルームの時間が流れる。
そして授業も始まったが特に問題もなく終わり、その間に新しい男友達もできる。
「草野くん、一緒に帰らない?」
今日友達になった柳瀬くんだ。休み時間に受験の話で盛り上がってそのまま話すようになった。
受験という全員共通の話題があるのは楽で良かった。
「先約があるんだけど一緒でもいいか?」
「そうなんだ、いいよ」
一緒に帰る約束もしていた春希の席に向かう。春希は基本、誰とでも仲良くなれる性格だし大丈夫だろう。
「春希、もう帰れるか?あと柳瀬くんも一緒でいい?」
「大丈夫だよ」
柳瀬くんが驚いた顔でこちらを見る。
「え!?カップルで同じ高校に来てたの!俺お邪魔じゃん!」
お互いクラスで交流するために、今日一日、話に行かなかったので全力で驚かれる。
「いや、幼馴染だよ」
「え、そうなの」
そして3人で話しながら下駄箱に向かう。柳瀬くんは少し遠慮がちな様子だ。
今日は何事もなく1日が過ぎていった。恋が同じ教室にいないというのが良かった。ただ顔を見ると惨めな気持ちを思い出しそうで、少し億劫になる。授業の中では、2組と一緒に活動するものもあるそうだ。
「なんだこれ?」
自分の下駄箱に紙が入っているのに気づく。
『放課後に校舎裏に来てください 中田恋』
「まじかよ…」
「あー」
隣で春希と柳瀬くんにも見られる。春希は理解したみたいだが、事情を知らない柳瀬くんはラブレターだと思い込む。入学した次の日にラブレターなどないだろうに。
「わあ!ラブレター!?草野くんプレイボーイだねぇ…」
仮にラブレターだとしても、プレイボーイではないだろうに。柳瀬くんは思い込みが少し強いのか、と僕は現実逃避をしてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます