第3話 人生最高の日?
(やっと勝と話せてよかった)
春希は入学式から帰り、心の底からそう思った。春希は中学生の時から勝の心配をしていたからだ。
勝は小学生から中学生に上がってやんちゃな性格から大人しくなっていた。
自分のことを俺から僕と呼び、頭も良くなり順位は上位にいることが普通になっていた。
クラスも同じにならないまま話すことも少なくなり、別人のようになったと思っていた。
そんなある日、不登校になっていると聞いて心配をしていた。実際、その噂は本当でテストの日以外は、ほとんど来なくなっていた。
春希は変わってしまった勝に何を話していいか分からず、でも心配で。
どうしようもできない自分にもどかしく思えた。そして、あまり良い成績の方でない春希は勉強を真剣に始める。それは勝と同じ高校に行くために。
しかし、一歩及ばず、行こうとしていた栄光高校に落ちてしまう。そして健勝高校へと行くことになった。この高校も頭が良く、勉強を熱心にしていなければ、春希は落ちていただろう。
なので健勝高校の入学式の日の朝、実は春希は、勝とは逆に落ち込んでいた。そして痴漢に遭って、春希の方が人生最低な日になろうとしていた。
そんな時、声変わりはしたが、やんちゃな声が助けてくれる。自分のことを俺と呼び、少し荒々しいが正義感が強い。
変わってしまったと思っていたが、昔と何も変わっていなかった勝の姿がそこにはあった。
電車から降りた後の勝は、中学生の時と似たような雰囲気になっている。もしかして、変わってしまったと思っていたのは成長して、落ち着きを持っただけなのかもしれない。
その成長を受け入れられずに、自分が距離を作ってしまっていたのかもしれない。
理由はよく分からない。何はともあれ、小学生の時の勝が、勝の中でまだ生きている。その事実が嬉しい。
幼馴染として、親友として明日からも会えるのが嬉しい。
しかし、まだ勝と勝を当て馬にした女子とのことは何も解決していない。
同じ学校になって、これからも絶対に顔を合わせないといけない。本格的に授業が始まるだろう明日からの方が、苦しむかもしれない。
私に出来ることが何かあるだろうか。そう考えるが、具体的なことは何も浮かばなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます