第40話 魔の獣

沢山の瓦礫の隙間の中で、俺はオリビアの足を切断し助け上げた。

「さ、オリビアは助けが来るまでここにいるんだ。俺は外に出てみんなを助けてくる。」

「ちょ、ちょっと待って!…その、1人じゃ寂しいから、外のお父様のところまで連れて行って!」

まあ、構わないだろう。守る対象が1箇所に固まるのは好都合だ。

「分かったよ、。」

「でも私、片足だから…おぶってもらいたい…なぁ…?」

「そんなことしなくてもこれで良いよ」

俺はオリビアの肩に触れて王の所にオリビアだけを転移をさせた。


「さて、始めるとするかな。」

休憩は終わった。もうこれでいつも通りの魔力出力だ。

俺は周囲の瓦礫の山を大量の魔力で吹き飛ばした。


「いたわ!あそこよ!」

バーバラが城の方を指さした。

「本当に間違いないんですか?!」

「えぇ!この私が小次郎の魔力を間違えるはずがないわ!!」

心配そうなマーガレットにバーバラが答える。

「どうでもいいから早く行きましょう。一刻も早く彼を守護するのが私の責務です。」

真面目そうなアイリスを2人は変な目で見た。

マーガレットとアイリスはバーバラに掴まった。

「転移!」

3人は小次郎の場所に転移した。


「あー良かった!心配したんですよ??」

「まぁ、なんとか大丈夫だ。」

「えぇでも王都は大丈夫じゃないみたいね。」

俺は周りの荒れ果てた光景に目をやった。

あれだけ立派な家々が並んで賑やかだったはずの王都が見違えるほどに荒野と化している。


「小次郎、原因の検討は付いているんでしょう?」

「恐らく、いや、間違いなく魔王軍の襲撃だ。」

「そんな…まさか…」

アイリスが暗い顔をした。


「◯◯!」

何者かの声と同時に王都が黒い結界で覆われた。

「なによ今の…」

「分からない。何者かが外側から結界を張ったせいで外を見れなくなった。」

「そんな高レベルの結界、もしかしてあの結界師が?」

「そんなわけないわ!あいつはちゃんと殺したはず…」

「万が一あの教会が蘇らせた場合さらに強くなったとも考えられます。」

「いや、それは無さそうだ。それにこの感じ…なにか……」


「急に真っ黒…黄瀬!!」

「違うよ力也!俺じゃないって!笑」

「よくこんな状況でそんなに愉快でいられるな。完全に追い詰められたんだぞ?」

「そうか?真守も楽しめよ!俺実は今、人生で1番興奮してるかもしんないww」

「これだからお前たちは、俺がいないとダメなんだよ。」

クラスの陽キャ男子の4人が荒れた土地の上で騒いでいる。

「だって考えても見ろよ、今こうしてる間にも最低5人のやべぇ強いやつがいるんだぜ?」

「それ本当か?マズい…俺は魔力検知が苦手なんだ。それを早く言え。今はエドが不在だ。ここは俺が仕切る。いいなみんな!」

カルロスが責任を持ってクラスメイトに指示をした。

「いつもの班に別れて国民を救助する。みんな忘れるな。これは訓練じゃない。だが、訓練を思い出せ。」

「「はい!!」」

「無理はするな。死ぬのは俺が絶対に許さない。」


「標的を複数発見。排除を開始します。」

何者かの声がどこからが聞こえた。

大きな魔力と共に爆発が起きた。

「きゃぁぁあ!!」

女子たちが叫び、砂煙を上げた。

「|雷鳴の堅城(レイジングフォートレス)!」

雷魔法のシールドが爆発を防いだが、シールドは点滅して消えてしまった。

「よくやった真守。全員無事か?」

「あぁ、そのようですけど、あいつ一発でシールド壊しやがりました。」

全員上を見ると手を翳している化け物のような男が上空に浮いていた。


「ターゲットの生存を確認。再び排除を開始します。」

「お前か、城をこんなにめちゃくちゃにしたのは。何者だ!目的は何だ!」

「私はマーロウ・エッセ・クィンティリオン。偉大なる主によって創造された魔獣だ。」

「魔獣?先生それってなんです?」

「ごく一部のレベルと魔力の高い魔人のみが生み出せる自分の眷属だ。そんなことができるほど高レベルの魔人が、もしかしたら近くにいるのかもしれない…」

「主はここには来ておりません。我々は魔王様直々にご命令を受けここに来ました。」

「カルロス先生、あの男と似た魔力を王都に5つ感じます。もしかして、魔人なんじゃ…」

「おい本当かよネネ…。分かった。よく聞けみんな!」

ネネの話を聞いてカルロスは慌てたようにみんなに指示を始めた。


「ここはエドの班に任せる。俺たちみたいな他の戦闘班は他のまじんのとうばつにいけ魔人の討伐に行き、その他は人命救助に向かえ。じゃあ解散!」

「そうはさせません。直ちに全員を排除します。|電漿爆破(プラズマバースト)!」

きっとまたあの爆発の魔法だ。彼は手を翳し黒く禍々しい魔力を発した。


「死ね!」

俺はマーロンに飛び蹴りをした。魔獣は遠くに吹っ飛んで行った。

「小次郎…」

ネネが小声でまた呟いた。

「危なかったなぁ、級長。あとちょっとでお前のクラスメイトが全員死ぬとこだったぞ?」

「それはないな。真守がまたあのシールドを張って爆発を防ぐはずだった。」

「悪いが力也、今のはさすがに間に合わなかったしさっきの魔力からして前よりも大きい魔法だった。きっと防ぎきれなかっただろう。」

藤原は悔しそうな顔をした。


「実際助かった。悪いな、吉川。さあ速く行くぞ!」

クラスのみんなが全員散り散りになった。

「あいつら他の魔獣のところに行ったのか。」

「それがどうしたの?」

「実は俺の仲間も他の魔獣のところに行ったんだ…まあいいか。」


「ターゲットの逃走と追加を確認。排除します。」

「お前はそればっかりだな。俺が排除してやるよ。ミイラ取りがミイラになるってやつだな。」

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